【大紀元日本1月28日】温家宝首相が24日、市民からの陳情を受けつける専門機関・国家信訪局を訪れ、陳情者の訴えに耳を傾けたと中国国内メディアが大々的に報じた。しかし、この共産党政権60年来初の「壮挙」も実は政治ショーであり、当日多くの陳情者が信訪局から100メートル以上離れた場所に隔離されていたことが、ラジオ自由アジア(RFA)の取材で明らかになった。
RFA26日の報道で、取材に応じた吉林省からの陳情者・劉金偉さんは、温首相が信訪局を訪れる直前に、約100人の警察が、信訪局付近で寝泊まりする陳情者らの布団や鍋などをすべて差し押さえたと証言した。
また、当日、信訪局の前には警察の車20台あまりと大小のバス5台が止まっており、中には撮影隊も乗っていたという。劉さんは、長年ここで訴えてきた陳情者が全員、遠方に隔離されていたことから、24日の対話は実は当局の「やらせ」だと指摘した。
長年北京で陳情しつづけてきた徐鳳茹さんは、「問題が起こり始める時に、法律に則って地元で解決すべき」という温首相の言葉に対して、地元はならず者が権力を握っているから北京に来たと話し、「地元へ戻れというのは、オオカミの群れに戻れということだ」と温首相の発言に反発した。
陳情者には北京市民もいる。強制立ち退きに遭った李金平さんは、デモ活動を申請したことで、公安当局に精神病院に連行され、2カ月経った今も拘束されたまま。彼の弟は公安当局を訴えたが、裁判所は「政府機構を相手に立案できない」との理由で却下した。
今回の温首相の行動について、陳情者との対話は、中国全土で高まる国民の抗議活動を抑えるための政治ショーに過ぎない、と国際人権監視団体のヒューマン・ライツ・ウォッチはみている。
北京当局は現在、3月に控えた「両会」が滞りなく開催されるよう、関係者間の気が急いている。温首相が信訪局に現れたのは、民衆の怒りを当局が意識している表れだとAFPは指摘している。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが発表した声明文の中で、「中国の信訪制度はすでに効力を失った。陳情者たちが虐待を受けることもよくある。その虐待は、当初彼らを陳情に駆り立てた状況よりも深刻である」と批判した。今回の行動は、「周到に計画されたもので、国営メディアを通して『共産党の指導者が人民に関心を寄せている』ことを国民に宣伝しようとしている」との見解を示した。
さらに、毎年数百万人が陳情を行っていること自体が、中国には真の法律制度が欠けていることを物語っているとも指摘した。