【大紀元日本2月15日】旧正月の連休が明けた中国の各地で、「民工荒(出稼ぎ労働者不足)」が深刻な問題となっている。数年前から指摘されているこの問題は、今年は沿海部のみならず、内陸部にも蔓延している。東部と西部、そして企業間で、出稼ぎ労働者の確保をめぐって争奪戦が起こっている。中国国内メディアが伝えた。
中国では、農村部からの出稼ぎ労働者はほとんど契約労働者として働くため、旧正月連休前に契約期間が終了となり、連休後に改めて職を探す人が多い。しかし近年では、連休明けは、求人に比べて就業希望者が少ないため、多くの企業が直接、都市の玄関口となる鉄道や長距離バスの駅付近に人事担当を出向かせて出稼ぎ労働者をスカウトする動きまで出ている。
国内メディア北方ネットによると、新年早々天津市で開かれた求人フェアでは、100社近い企業の3700人の求人枠に対し、応募者は2800人に止まった。フェアに参加した南華製靴の責任者は、新世代の農民工は生産ラインに立つことを敬遠する傾向があり、「企業環境や宿泊条件、給料、時には工場の立地にも強いこだわりを持っている」と語った。「昨年1年で作業員の給料を17%上げたのに、10人採用しても3カ月以上続くのは4人以下」と売り手市場における労働力の定着の難しさを嘆いた。
上海では4回にわたり大規模な求人フェアが開かれたが、ほとんどの参加企業は人集めに頭を悩ませ、出稼ぎ労働者を迎えるために直接内陸都市まで出向くという試みもなされている。
南京の求人フェアでは、2万人の求人に対し1割以下の1000人余りしか採用できなかったという。また、浙江省温州市では17人の求人に対して応募者1人という「超求人難」であった。広州市では賃金水準を昨年より11.03%上げたが、12日に開かれた募集イベントでは、200社5000人の募集にも、労働者の足は重かったという。
経済先進地域に限らず、多くの企業がコストのより安い内陸部へ工場を移転したため、内陸部でも多くの働き手の需要が生じ、地域間や企業間で労働力の争奪が繰り広げられている。
中国新聞網によると、出稼ぎ労働者を多く出してきた安徽省では、現在、25万人の求人枠が余っている。省当局は流出労働力の呼び戻しや、省内労働力の小都市への分散に乗り出している。
また、11日に湖南省で開かれた求人フェアでは、地元と沿海部の間で人材争奪戦が起こっている。地元湖南省の企業は、給与保障、住居、子弟の学校も手配するなど待遇の良さを前面にアピールしているが、沿海部の企業は、高い給与福利水準を売りにしていたという。
「求人難」はなぜ起きたのか
今までの「農民工」はいわゆる3Kの職場で働くケースが多い。清掃員や工事作業員、重労働の工場労働者として「無尽蔵」の存在だった。
しかし、「80後」「90後」と呼ばれる80年代、90年代生まれの農村部の若者は、高卒程度の学歴を持つ者が多くなり、また物質的にも親の世代より恵まれているため、働く地域や職種を選ぶ傾向が強いという。
中国誌・南方週末は、「農民工」という言葉自体もすでに時代遅れだと指摘しており、彼らは今後の中国を支える「産業労働者」となるべきだと主張する。この新世代の労働者の意識の変貌に対して、産業形態における労働集約型から資本集約型への転換が追いついていないことが、「求人難」の主な理由だと分析する。
また、出稼ぎ労働者が都市部で生活するには、厳しい戸籍制度や高い生活コスト、社会保険や医療、子女の就学面における不平等、また、都市部住民からの根強い差別などに直面しなければならない。こういった問題がある一方で、多くの企業が内陸部に工場を移転したため、労働者は家の近くで仕事を見つけられるようになり、大都市から足を遠ざける人が増えたという。
一方、新世代の出稼ぎ労働者は労働集約型の仕事を敬遠するが、彼らが受けた教育は技術職に就くには不十分というジレンマも抱えている。労働集約型業種での需要が多くあっても応募者がいない、技術職には応募者がいても適切な人材がいない、という需要と供給のズレも都市部の労働力不足に拍車を掛けている。