【大紀元日本2月17日】内閣府が14日、2010年の国内総生産(GDP)を発表し、日本の名目GDPは約4000億ドルの差で、42年間維持してきた「世界第2位の経済大国」の座を中国に明け渡した。中国にとって朗報とも言えるこのニュースについて、ネットユーザーから「喜べない」など批判的なコメントが相次ぎ、記事のコメント欄が閉鎖されるという皮肉の結果となった。
一方、政府メディアもGDPが世界2位に確定したことを、「冷静に受け止めるべきだ」と、異例の低姿勢を見せている。背後に押し寄せてくる「大国責任論」、「中国脅威論」への警戒があるものと見られる。
「喜べない」ネットユーザー
名目GDPが日本を超えたとはいえ、一人当たりの平均GDPは日本の十分の一で、世界100位以下。市民は世界第2位という肩書きを実感していないという。
「日本国民の生活水準は、われわれよりずっと上だ」
「国民は喜んでいない。インフレの重圧がのしかかっている。国民は経済発展の成果を享受していない」
「中国が本当に世界2位の大国になったと、国民の誰も思っていない」
「中国はビラミッド型の社会、日本はラグビー型の社会」
「GDPの成長は国民の幸せのためにあるのだ。国民が幸せでなければ、GDPばかり追求する意味がどこにあるのか」
一部のネットユーザーは、2010年5月に国営中央テレビが報じた「1949年の一人当たり平均GDPは世界100位」というデータを引用し、「建国当時は100位、60年が経った今も100位前後。どこが発展したと言えるのか」と疑問の声を寄せている。
また、日本の与謝野馨経済財政相の「我々は順位を争って経済活動をやっているわけではなく、国民生活をより豊かにするためにやっている」との発言が中国国内メディアに紹介され、大きな関心を呼んだ。
これまで日本の政治家に強く反発してきたネットユーザーも、「中国の痛いところを突いた」、「これこそ日本との距離」、「いつになったら、われわれの政府もこういう意識を持つようになるのか」と感心しきりだった。
その後、関連記事のコメント欄が相次ぎ閉鎖された。
低姿勢を貫く政府とメディア
中国外務省の馬朝旭報道官は15日、GDPが世界2位になったことについて、「中国の貧困人口は1億5000万人もいる。中国は現在も相変わらず発展途上国である」と世界2位の名誉に恐れ多い様子だった。
新華社通信のニュースサイト新華網に「GDP、日本を4050億ドル超えるも、冷静に受け止めるべき」と題する記事が掲載され、ほかのメディアを見ても「冷静論」一色で、順位争いが好きな中国にとって異例とも言える反応だった。
新華網の記事のなかで、中国社会科学院の経済専門家・徐逢賢氏は、「この新しい肩書きを冷静に受け止めるべきだ。今後中国は外交、国際貿易と国際会議でもっと多くの責任と義務を負うことになる」との見解を示した。
国内紙・北京晨報は、東京大学の袁鋼・客員教授のコメントを紹介し、「中国はまだ貧困国。中国経済脅威論が再燃しないよう、国内メディアは(世界2位になった)この変化を薄めるべきである」と強調した。また、「世界2位はいつも世界に叩かれている。ドイツや日本がその例だ」との論調も浸透している。
そもそも、中国のGDPが本当に発表された数字通りなのか、疑問視する声もある。大手ポータルサイト網易に16日に掲載された記事によると、各省が発表したGDPの総計は、全国のGDPより3.2兆元多いという。そのうち、28の省のGDP成長率は全国の成長率を上回っている。専門家は「地方政府は業績のためにGDPを水増ししている」と明言している。
名実が伴わない世界2位の経済大国という肩書きと、それによって押し寄せてくる大国責任論や中国脅威論、中国はしばらくその板ばさみになりそうだ。