「悪人主導の中共政権、崩壊止められぬ」 人権弁護士・高智晟の手記

2011/02/28 更新: 2011/02/28

【大紀元日本2月28日】高智晟(こう ちせい)。中国の人権弁護士で、「中国共産党当局が最も恐れている人権活動家」といわれている。2000年、北京に智晟法律事務所を設けると、汚職役人の告発、人権問題、中国当局に弾圧されている法輪功など、多くの弁護士が尻込みする案件について弁護を請け負った。2006年には「国家政権転覆扇動罪」で、懲役3年、執行猶予5年の判決が下された。その後、中国の秘密警察に幾たびも拘束され、虐待されているが、今は行方不明。

2010年3月、北京で一時姿を見せたが、2010年4月、AP通信の取材を受けたあと行方が分からくなった。今年1月10日、胡錦濤国家主席の訪米前、AP通信は2010年4月の同氏への取材内容を伝え、同氏の証言として、中国当局に監禁された期間中に受けた悲惨なリンチ・拷問の内容を報じた。ほぼ同時期、同氏が2009年1月監禁中に書き上げた手記「私の心の声」が米国に亡命した妻により公開された。

手記で、その家族が受けた迫害、中国での深刻な人権状況、暴力集団となっている司法当局、社会モラルを破壊する中共当局への痛烈な批判、中国民主運動に対する考えや、中共の人権侵害に目をつぶって中国当局と経済利益のやり取りをする先進国の政治家への譴責が述べられている。

次はその手記の全訳。見出しは編集者が加えたもの。

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私の心の声

この広大な自由で文明的な世界で、中国共産党は依然としてあらゆる悪事をやりつくしています。正に驚きだ!

13億人の同胞の中では、我が家族はいかに無力なことか。

2007年9月以前、中国の大地で中国共産党の命令に従わずに、公に私と往来を続けているのは4人しかいませんでした。結局、この4人のうち、一人は長期にわたり警察の監視下におかれ、3人は2007年9月に強制連行されて野蛮な暴力と精神的なリンチに遭いました。2008年になっても依然として中共のこの命令に従わない胡佳さんは、不法に監禁され、黄燕さんは強制連行されて法輪功学習者と同じ牢獄に監禁され、残酷な拷問に遭っていました。そこで彼女が実際に目にしたり聞いたりした法輪功同胞への拷問は、さらに残虐非道なものでした。拷問の脅威に脅かされる今、公に私と往来する人はとうとういなくなりました。

いま、少しでも発言するのは、極めて難しく、かつとても危険です。当局はこれまで3年間、大量な人力、物力、財力を投じて、もっとも残酷な手段を用いて、私が発言するのを阻止してきました。その結果、去年(2008年)11月に地方に行ったときなど、滞在先のホテルでも警官に同じ部屋で近距離で監視されました。彼らは見事に目的を達しました。私はただ歩けるだけの廃人と化しました。よく妻に冗談で言いました。「世界では60億の人がひとつの地球村に生きているのに、わが家族は世界とのつながりが絶たされた」。外部の友人らは、わが家は言葉に表せない苦しみにさらされていると思っているでしょうが、実際にはもっとも苦しんでいるのは、妻の耿和です。私は生来楽観的で、神を信じているため、たとえ拷問で生き地獄をさまよいながらも、苦痛は肉体的な部分にとどまっている。神が存在している心の中には、確かに苦痛が入り込む空間はありません。私は二人のこどもとよく大声で歌を歌うだが、妻は一度も参加したことがない。私の各種の努力の甲斐もなく、妻を苦しみから抜け出させることはできませんでした。

妻の苦しみの根源は娘の格格が学校へ通うのを禁じられたことです。わが子が学校に行けなくなってから、私も一時絶望しました。これ以上苦しいことはないと感じました。驚きと怒りをこらえながら、私は絶えず当局に抗議し、妻はこの件で精神状態が崩壊寸前となりました。

今の中国で、善意とモラルを守ることは危険

この場をかりて、私は切に懇願します。中国国内のまだ自由のある友人たちよ、ぜひ引き続き郭飛雄さんに関心を寄せて、その妻と子供たちを支援してほしいのです。中国の秘密警察の網が全国に張り巡らされる中、民族の精神がかつてないほどに麻痺している状況下で、われわれは郭飛雄さんのような民衆のために抗争する勇士を必要します。郭飛雄さんや、胡佳さん、楊天水さん、陳光誠さん、許万平さん、王炳章さん、郭泉さんなどの、命を賭けて自由・信仰を守る勇士は、まさに中国の希望です。今、彼らと彼らの家族を助ければ、わが多難な民族が将来この歴史を振り返るとき、後世に恥と思われなくなります。

いまの中国では、善意と道徳を守りながら生きるのは極めて困難だということを、人々は内心でははっきりとわかっています。胡佳さんの運命はこの厳しい社会の現実をさらに物語っています。すなわち、道徳が高尚な人間でいるのは、困難である上とても危険です。「善悪には必ず報いがある」。この古来からの伝統的観念は、今の中国共産党文化が氾濫する現実社会で致命的に壊滅されました。昔の中国社会では、道徳と善良の擁護は随所に見られましたが、いまの中国では、道それが一掃されて根こそぎ排斥されました。中国共産党政権はまさに、道徳欠如と悪の典型的なシンボルと代表になりました。

今日の中国のいわゆる経済発展の奇跡は、「致命的な破壊」を代償にしています。人々が手放しで喜んでいるのは、表面的な繁栄に過ぎない畸形の経済発展であり、環境への深刻な破壊を見て見ぬふりをしています。そして、これまで約70%の中国人が長期にわたりいかなる社会保障もない非人道的な現実に置かれているのを見て見ぬふりをしています。いまの中国では、古くからの水郷では飲用水が飲めず、乳業が盛んだった郷では飲むミルクがなく、農民は自分の栽培した食料を食べない。食品生産者が自分の作った食品を食べないというのは、すでに普遍的な現象となっています。このようにして、自らを欺いて、是非を転倒させ、美をけなし醜を讃える社会風習が流行っています。このような状況下で、中共政権という不誠実かつ不道徳な悪い見本の影が随所に見られます。

中共政権、悪人主導の不良政権

この不良政権は、自ら制定した悪法を用いて悪を昂揚させ、善を抑制しており、悪人に主導権を握らせています。競争において、権力のある者が勝ち、道徳を守らない人が勝てる。強大な権利集団がこのようにして形成されました。司法の不公正、悪人警官の横行により、国民は不公平な改革で形成された権力集団に強い憎しみと軽蔑感を抱いており、各地で暴力による抗争事件が相次いで発生しています。この民族は再び暴力の悪循環に押し込まれたとの不吉な警鐘を鳴らしました。

今日の中国社会では、民情が退廃しています。社会全体では、一部の人がひどく腐敗しただけでなく、大多数の人が普遍的に堕落しています。執政者がうぬぼれていたオリンピックは結局、独裁政治と文化を、スポーツの盛典を利用して宣伝することになりました。オリンピック精神は専制政治の精神に置き換えられました。オリンピックの開会式と閉会式での、ロボットのような出演者が表した独裁体制の文化は、ほどよく大々的にいわゆる平和的な発展のイメージを宣伝できました。この過程において、独裁政権がプロデュース した歌と踊りの祝典は、社会弱者層の民衆の悲惨な叫び声を隠し、中共政権が人権を踏みにじる悪行を隠ぺいしました。私が新疆ウイグル自治区で得た情報によれば、オリンピック聖火が中国国内をリレーするとき、沿道で歓迎の声を上げた民衆は皆当局が選んで集めてきたものです。政府機関は聖火リレーの沿道の家々に口頭で警告を出しました。すなわち、「いかなる人も窓をあけてはならない。横断幕を掲げたりスローガンを叫んだりしてはならない。違反者に対して、至る所にいる私服警官が容赦なく処罰する。責任を徹底的に追及する」。盛大な歓迎ムードの裏には虚しい演出が隠されており、表の歓迎の叫び声と平和な風景の背後には、あからさまな暴力的恫喝があります。中国共産党政権はこのように国民を操って異なる声を封じ込めて、国際社会に作り上げた虚偽な社会をみせている。

権力グループのメンバーの大半もはっきりとわかっているのは、中共がプロデュースしたこれらの虚偽な社会では独裁政権の崩壊の流れを止められません。盛大な宣伝が終われば、汚職幹部、無法警官たちの悪行は依然として続き、中国各地の抗争は依然として勃発し続けます。

独裁に抵抗する行動を取ろう

この場を借りて、私は中国の運命に注目する海外の中国人たちに感謝の意を表したいです。もっと多くの海外の中国人に、平和と民主政治の実現に関心を寄せてほしいです。海外の民主団体、信仰グループおよび人権組織の一致団結を期待しており、中国の平和的な民主政治の実現に挫けずに奮闘してほしいです。また、人権問題の被害者たちが声を発せられるように、人権委員会の設立をも呼びかけたいのです。中国には人権問題の被害者が大勢います。できるだけ個々の事案を集めて国連人権委員会および他国の人権機関に提出し、そして定期的に公表してほしいです。また、「人権新聞」の創立をも提案したいのです。毎日、人権被害の案件や、加害者の名前と所属機関を公表し、山積みの中国の人権被害の真相を国際社会に見せます。委員会の傘下には、各省および市でワーキングチームを設け、人権侵害の事案を収集して支援します。そのほか、専門チームの立ち上げをも提案したいです。例えば、宗教信仰チーム、陳情問題チーム、農地収用農民のチーム、六・四天安門事件チームなど。このようにして、国内の人権侵害の具体的な被害者の問題に対して、実際の行動を起こす。これはまさに真の民主政治の原点です。

また、人々に対して、民族の自治を求めるすべての団体をも含めて、中国人の反独裁政治の勢力を一致団結させることを提案したいのです。ラジオ網などの手段を通して、未来の中国の連邦自治の、国と人民に対するメリットを広く伝えていきましょう。たとえば連邦自治が少数民族の自治を自然に実現させるのです。同時に、未来の中国は、すべての市民が医療と年金などの福利厚生制度を実現させ、独立した司法制度を実現させ、独裁に迫害された被害者たちに補償を与える制度の実現や、共産党主悪に対する刑事責任への追及などを実現させるのです。『九評共産党』(2004年に出版された大紀元新聞社社説。中国共産党の邪悪の本質を述べ、中国共産党を解体させると主張)が広まったように、われわれの(未来中国の)理念を広め、国民の覚醒を促進させるべきです。

ここで、海外のすべての力が団結して、郭泉氏と劉暁波氏の救出を助けてください。劉さんの逮捕は当局の悪質を暴露しました。

法輪功への弾圧に目をつぶる民主活動家らへ

ここでは、私は中国の民主人権運動の関係者にも呼びかけたいです。現在、相当数の民主・人権運動の活動家は行動派ではなくなり、名利を計らう投機者になりつつあります。わが民族史上において、天地をも震撼させている法輪功への弾圧に、彼らは見てみぬふりで、聞く耳を持とうとしません。私が公に法輪功団体のために訴えてから、彼らは裏で私は鷹派であると批評しました。この種の「共通認識」は、現在の中国の悪人たちを甘やかして、迫害される同胞にとってまさに泣き面に蜂です。私が発起したハンストの抗議運動は平和的かつ合法であるのに、名利を計らうこれらの民主運動の投機者らは支持するどころか、一斉に脅したりすかしたりして非難を発しました。彼らの中の一部の文人たちは、義理という旗を掲げて背後から私を攻撃してきました。ひいては私が監禁されてからもこの行動を止めませんでした。本当に遺憾極まりないことです。どうしてこのようにするのでしょうか。私が発言できる機会はあまりないのです。今日、この問題点をはっきりとさせなければなりません。これは陰湿な人間性によるものであり、私利私欲な人間性がもたらした結果です。早く止めましょう!あなたの文学力がどんなに優れていても無駄です。拷問に耐え抜いた私がこの苦しい心の声を発しています。耳ざわりですが、断じて理性のない言葉ではないのをわかってほしいです。

今日、中共の国際社会の「親友」「ベストパートナー」たちは、中共という現代のもっとも暗黒な政権による人類の文明への破壊をはっきりとわかっています。しかし、これらの中共の「親友」「ベスト・パートナー」らは、自己利益のために暗黒政権の一部分となりました。また、一部の「親友」「ペスト・パートナー」らは中共の巧みな詐欺手段に惑わされており、共産党独裁政権の邪悪な本質を完全に知らないでいます。ひいては、見せられた虚偽な一面を讃えています。

最後に、真に中国の人権事業に関心を寄せる外国の友人たちに感謝の意を表したいです。(欧州連合の)スコット委員長、(国連の拷問問題調査官の)ノッワーク氏、(法輪功学習者への臓器狩り問題を調査する)カナダ人調査官の2人のデービット氏、および欧州議会の支援者の皆さん、あなたたちの無私な道義的な支持、あなたたちの支持は我々の民主・自由のための抗争に希望をもたらしています。

この文章を書いたことで、私は再び強制連行されるでしょう。強制連行されることは私の生活の一部となっています。もし、再びやってくるのであれば、さっさと来なさい!

高智晟

2009年1月1日完成

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