【大紀元日本3月1日】情報統制という壁に囲まれる中国人にとって、アンテナから拾う短波ラジオの電波は時には真実を知る唯一の手段である。その電波の2大柱となっていた米VOAと英BBCが相次いで中国の上空から撤退しようとする中、在米中国人による「希望の声」ラジオはこのほど、その放送をさらに拡大し、中国当局が封鎖するニュースを引き続き報道していく姿勢を示した。
サンフランシスコに本部を置く「希望の声」ラジオは2004年から中国向け短波放送を始めている。当初毎日2時間だった放送も、いまでは毎日平均20時間にまで拡大している。同ラジオの年間制作番組数は2万超で、民間資本では最大の中国向けラジオ放送局である。
同ラジオの曾勇・総裁は短波放送の拡大について、「中国のような不均衡な発展模式をとりながら、厳しい情報規制を課している国に対して、真実を短波に載せて広く伝えることはわれわれの希望で使命である」と述べ、BBCやVOAの対中国ラジオ放送の中止は「早すぎる」と、遺憾の意を示した。
短波ラジオの意義について同総裁はさらに、「専制政権の中国では、メディアによる世論の監督作用が果たされていないため、人々はいっそう中立の真実の情報を渇望している」と述べた。また、インターネットの普及率も人口の三分の一に留まっており、50代以上の年齢層や、農村と中小都市の住民、出稼ぎ労働者などのグループにとって、短波ラジオ放送は依然として情報取得の重要手段であると指摘。インターネットへの妨害が恣意になされている中国では、「情報提供ルートの多様化は重要不可欠であり、対中国ラジオ放送はむしろ増やすべきだ」などと語った。
同総裁はまた、国際社会に対し、中国のインターネット、短波ラジオ放送、衛星テレビ放送などの情報提供手段への投資を呼びかけた。「国際社会に本当に使命感を持ち、長い目で事態を見ることができるならば、中国の民衆の需要に耳を傾けるべきだ」として、多種多様な情報提供こそ「中国という国を良い方向に導くための有効な手段である」と訴えた。
VOAの放送停止は米中首脳会談で決めたことか
「希望の声」が強まるなかで、消えそうなVOAも注目されている。60年の中国向け短波放送の歴史を持つ同ラジオは、中国国民に当局の検閲で知らされないニュースを提供する役割を果たしてきた。中国の情報封鎖や世界へ向けてのイデオロギーの輸出が際立っているなか、同放送の撤退方針を発表した米当局に対し、議会から「米国が中国の無法政権におびえた証拠だ」との反対論が出ている。
また、VOAの中国向け放送停止の方針は胡錦濤・主席が1月にアメリカを訪問した後に出されており、中国国営新華社もVOAの放送停止のニュースを報道するとき、背景の写真は胡主席とオバマ大統領がホワイトハウスで握手を交わすシーンだった。ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)の中国語部元主任・呉葆璋氏は、「VOAの中国語放送停止は米中両国首脳の会談で決めたこと、と新華社は誇示したかったのではないか」と分析した。
在米経済学者の何清漣氏もVOAやBBCの放送停止は「中国当局にコントロールされていない、中国語自由報道の最後の領域を自ら放棄してしている」と批判し、「世界の民主化事業の推進に害をもたらす」と、憂慮を示した。