【大紀元日本3月15日】ダライ・ラマ14世は3月10日、チベット亡命政府の指導者を引退すると発表した。次期後継者は民主選挙で誕生する見込み。ダライ・ラマが政教分離を図った理由は、自らの死後、中国当局が転生を指定することで、チベットへのコントロールをさらに強化することを回避するためではないかとみられる。
ダライ・ラマ14世はチベット亡命政府の所在地、インド北部のダラムサラで行われたチベット平和抗争52周年の記念集会で辞意を表明し、自分が担っているすべての職務を次期指導者に委ねると明言した。この提案は25日まで開催の亡命政府議会で可決される見込み。
チベット亡命政府の報道官は英BBC(中国語版)の取材に対し、同決断はダライ・ラマ14世の長年来の考えであり、年齢や健康状況と関係がないと述べた。ダライ・ラマ14世はこれまでも「自分の特別な身分により、チベットの民主発展に障害をもたらすのを避けたい」と繰り返し示したという。
また、ダライ・ラマ14世の後継者、次期ダライ・ラマの人選について、14世はかつて、自分の任命あるいは民主選挙で決めることを示唆していた。それについて、同報道官は、「チベットの歴史上において、ダライ・ラマの人選指定には様々な異なる方式があり、皆チベット仏教の理念に準じている」と述べた。
一方、14世の政権引退について、中国当局は「これは国際社会を欺く芝居である」と反応を示した。また、ダライ・ラマの後継者の人選について、当局が指定したチベット自治区政府のトップのバイマチリン氏はこのほど談話を発表、「14世にはその後継者を任命する権利がない」とし、チベットの歴史と仏教の伝統に準じるべきと主張した。
BBCは、「中国当局のこの態度について、一部では憂慮する声が聞かれた。すなわち、いったんダライ・ラマ14世が死去すれば、中国当局は自らその後継者を任命するであろう。そうなれば、中国当局によるチベットへのコントロールがさらに強くなってしまう」と報じた。
ダライ・ラマ14世が1995年に指定したパンチェン・ラマ(チベット仏教においてダライ・ラマに次ぐ高位の化身ラマの称号である)11世は中国当局に連行されてからずっと行方不明のままである。その一方、中国当局が指定したパンチェン・ラマ11世はそのコントロール下に置かれている。チベット人の間では、ダライ・ラマ14世が死去すれば、中国当局のバンチェン・ラマがダライ・ラマの転生を指定するのではないかと憂慮する声が根強い。
台湾紙・自由時報は、今回14世が在世中に政権引退するのは、そういった事態を回避するためと分析した。政教分離することで、たとえ中国当局はダライ・ラマの後継者を強引に指定しても、14世が指定した後継者は依然としてチベット亡命政府を率いることができるからだ。
ダライ・ラマ14世は今回の講演で、次のように語った。「私がここで再度説明したいのは、権力を移行するのは、責任逃れでもなければ、チベットの民主事業に希望を失い放棄したいのでもない。チベット民族の長期的な利益を考慮しているためです」。