【大紀元日本3月17日】福島第1原発の事故を受け、中国では、原子力の安全管理に関する基本法が長期にわたって未整備である、と国内の専門家から懸念の声が上がっている。15日付の中国紙・21世紀経済報道が伝えた。
「原子力基本法となる『原子力法』が制定されていれば、中国の原発は今のような野放し状態にはなっていないだろう」と、原発専門家の指摘を報道しており、同専門家はさらに、中国では数多くの規定や法規を制定したにもかかわらず、基本となる法律の欠如で、多くの根本的な問題が解決できていないと述べている。
また、環境保護局(省)の原子力安全管理部署の陳金元・監査員は、「すべての発展国とほとんどの途上国に『原子力法』や『核安全法』が存在しているのに、国際原子力機構(IAEA)のメンバーになった中国は、原子力安全と放射線安全に関する法律が空白のままだ」と懸念を示した。これらの法律の未整備は、国際社会に中国の原子力の安全管理への不信感を招いているとの見解も述べた。
中国では、増大するエネルギー需要のために原発建設を急ピッチで進めているが、基本法となる「原子力法」は、1984年に制定作業に着手してから27年たっても取りまとめのめどは立っていない。21世紀経済報道によると、基本法の起草は、原子力安全局と原子力工業部、衛生部など多部門にわたる作業が必要だったが、各部門間で長い間、共通の認識ができておらず、長年たなざらし状態だったという。
原子力に関する法律の不備により、監督管理責任はあいまいだという。原子力に関係する政府機関は4つに上り、これらの機関の間の役割が明確に決められていない。そのため、「利益があるときは我先に群がり、核汚染が発生すると責任のなすり合いが生じ、責任を追及することもできない」と新エネルギー立法を研究する南京工業大学の除輝鴻氏は指摘した。
一方、当局は今年中に原子力法を制定する可能性を示唆しているが、専門家らは立法の過程における難しさに変わりがないため楽観視はできない。それよりも早急に具体的な原発運営にかかわる「核安全法」の制定が現実的だとの声も上がっている。
中国の原発は「大躍進」の時代に入っている。先日北京で開かれた全人代で審議された第12期五カ年計画では、2015年末までに、設備容量4000万キロワットの原子力発電ユニットが着工される見通しとなっている。これは過去30年間に建設された原発ユニットの総容量の4倍となる。しかし、ロイター社の報道によると、中国は原発産業が急速に発展している一方、それに伴う経験のある管理者が不足しているため、原子力の安全性が潜在的に確保されていない、と中国原子力学会の関係者は指摘している。