【大紀元日本4月6日】中国を代表する現代芸術家で、北京五輪のメインスタジアム「鳥の巣」を手がけた艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏が3日、北京空港で当局に連行されてから、連絡が途絶えている。それに対し、アメリカやドイツ政府などは艾氏の「即時釈放」を要求し、中国当局の「基本的人権を踏みにじる」行為を批判した。
香港紙・明報は4日、艾氏の香港籍アシスタント・劉艶萍さんの証言を紹介した。それによると、艾氏は3日の8時40分ごろ、香港行きの航空機に搭乗しようとしたところ、税関職員に理由を告げられることなく連行された。艾氏は事前に身の危険を察し、劉さんに香港に入ったら情報を発信するよう依頼した、と劉さんはツイッターで明らかにした。
さらに、劉さんのツイッターによると、艾氏の身柄が拘束されてから約1時間後、警察が北京・草場地芸術区にある同氏のアトリエを捜索し、スタッフ8人を取り調べのため連行したほか、アトリエと住居にあった約30台のパソコンを差し押さえた。艾氏の妻の路青さんは自宅軟禁されており、アトリエ周辺は警察が見張っているため、出入りができないという。
艾氏は中国で指折りの芸術家でありながら、当局に対し、たびたび痛烈な批判を展開してきた。毒入り粉ミルク事件や四川大地震のおから工事について独自の調査を行い、また人権活動家の活動を支援してきた。当局はそんな艾氏に対し自宅軟禁や出国禁止などの手段で弾圧してきたが、今年に入ってから、上海に新設した艾氏のアトリエを取り壊したり、初の大型展覧会を阻止したりするなど、弾圧がエスカレートした。
こうした中、先月29日に艾氏はAFP社に、「中国国内でほとんど作品展を開くことができない」として、ドイツに新たなアトリエを作る計画を表明した。それでも艾氏は、「生活が脅かされるまで」は創作とデザインの拠点は引き続き北京に置くと語っていた。
今回の艾氏の拘束は「ジャスミン集会日」の7回目の日曜日に当たるため、「ジャスミン革命との関連が連想される」とラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)は指摘した。中国では今年2月からインターネットで日曜日ごとの「ジャスミン集会」が呼びかけられて以来、当局は批判的な態度をとる知識人に対し、逮捕や拘束、自宅軟禁などの取り締まりを強めていた。
艾氏の拘束について、米国務省のトナー副報道官代行は4日の定例記者会見で、「われわれは中国政府に即時釈放を要求する」と述べ、「拘束は中国人の基本的自由と人権を踏みにじっている」と批判した。さらに、「人権活動家が国際的に公認された人権を行使するだけで、行方不明になったり、不法監禁・逮捕されることを、強く懸念している」と強調した。
アメリカ以外にも、ドイツやフランス、イギリス、オーストリアの外務省が中国政府に対して、艾氏の釈放を求めている。ドイツ紙ターゲス・シュピーゲルは「艾氏の拘束は中国人権の悪化を物語っている。艾氏は、自らの知名度ではすでに自分を守りきれないと気付いたため、ドイツに来ようとしたが、その前に拘束されてしまった。艾氏の拘束は、ギド・ヴェスターヴェレ(独)外相が北京で人権擁護を訴えた次の日に起きている。この時間的な一致は皮肉に見える」と批判した。