「陰性エイズ」?中国を襲った未知のウイルス(下)

2011/04/19 更新: 2011/04/19

【大紀元日本4月19日】

患者の実例

虎年さん、遼寧省鞍山市在住、27歳。ネットを通じてある女性と知り合い、2010年2月に彼女と食事をした後にセックスをした。翌日病状が現れ、首、わき下、そけい部のリンパ節が立てないほど激しく痛んだ。事後、その女性の消息が絶えた。彼女と知り合ってセックスした経緯を思い出してみれば、とても不自然な部分があるため、彼女は計画的に自分に病気を感染させた、と虎年さんは推測している。

十数日経って、虎年さんの目は見えなくなった。発病してわずか2カ月、全身に症状が現れ、舌面が白くなり、唇に疱疹が現れ、体表に赤い発疹が出てかゆくなる。皮膚が老化し、以前の彼の肌はとても白かったが、今は紫がかり黄色っぽくくすみ、多くの皮下出血と皮膚の剥れが現れ、顔にも赤い発疹が出た。力を入れて踏むと、かかとに豆状のしこりが現れる。終点xun_モ識がもうろうとし、ひどい頭痛がして頭の血管がピクピクし、記憶力は明らかに減退した。最も不思議なのは、10日間食事をしなくても空腹感がない。

取材を受けた時、彼はすでに連続11日間食事をしていない。毎日水だけを飲み、アイス2本を食べる。身長170センチの彼はわずか2カ月で体重は50キロから40キロにまで激減した。全身がだるくて、血管の中で何かが跳んでいるようにピクピクして、絶えず身体が震え、よく吐き気がして、胃は吐き出されるようにとても痛い。

虎年さんは裕福な家庭に生まれて、医療費の心配はないが、彼の病状を知った家族は彼から遠ざかっている。彼は精神的にとても緊張して、毎回トイレを使った後、何度も便座を掃除し、家の家具、置物などにできるだけ触らないように注意している。「病院に行って検査しても何も分からない。今自分に唯一できるのは、ぐいぐいとむやみに薬を口に入れるだけだ」と彼は言う。

開朗さん、黒龍江省七台河あたりに在住、大卒、30代。広東省東莞市で11年働いていた。ある日、コンドームを使わないセックスをした後に感染した。4カ月の潜伏期間中に、彼は無意識にウイルスをすべての同僚、家族、妻の実家の家族全員、姉の全家族、姉婿の全家族、計数十人にうつした。この人たちがさらにどれだけの人にうつすのか!今、彼は心臓、肝臓、脾臓、胃などすべての内臓と全身の骨や筋肉が痛い。また、9歳の娘も病魔に苦しめられて頻繁に高熱を出す。額に針の穴がいっぱい残った娘を見ていると、心が一層苦しくなる。どのように自殺すればいいかを考えて頭がいっぱいだと、絶望した彼は記者に話した。

天晴さん、福建省アモイ市の大学4年生、23歳、一人っ子。はじめて売春婦とセックスした時、安全措置をとったが、3カ月後に病状が現れた。最初、口のあたりに水ぶくれができて、今のなお消えない。舌に白い斑点と水ぶくれができた。それから関節が痛くなり、筋肉はピクピクと跳ぶ。今はとても眠くて、1日16時間寝てもまだ眠い。学校の先生と友人は彼の病気のことをまだ知らない。症状が現れてからネットで検索して、とうとう自分はいわゆる「エイズ恐怖症」に罹ったと確信した。両親とも会社にリストラされて家計は苦しいので、卒業後良い仕事を探して両親に恩返しをしたかった。「自分の病気は恐怖感と関係ない。決して怖いから発症したわけではない」と彼は記者に語った。

_zhan_慶さん、福建省出身、38歳、教師。ふだんしっかりしているが、ある日酒を飲んだ後に妻以外の女性とセックスをした。3日後に病状が現れて性器に水ぶくれができた。息子を抱いた時に、息子の頭が彼の首まわりの水ぶくれに触れたのがきっかけで、息子も感染した。その後、妻も感染して彼と同じ病状を呈し、皮下出血があり、筋肉はしきりに痙攣して、舌の苔は白くなり、2カ月来ずっと血便が出た。妹の息子、隣人の息子も彼の息子と一緒に遊ぶ時に感染した。カップを共用するような不衛生な習慣がある彼の村で、村人全員に病状が現れた。エイズはとても遠い存在だと思った彼は、感染してから恐怖心が生じて、それから彼はすべての知恵を絞って病因を探った。

懺悔さん、30代、大学の法律学科卒業。以前公安関係に勤めていた。浮気をして感染してから、妻と2歳半の子供にも感染させた。最初、彼は連続5日間40℃近い高熱を出して、半月後、性器に疱疹が出て、咽頭炎が発症し、CD4(陽性リンパ球細胞)の値は300まで下がって、正常値を下回った。両親を巻き添えにしないため、彼は冷静に両親との付き合いを断った。親に理由も説明できない彼は、1人で涙を浮かべて苦い現実を飲み込んだ。

恐怖が先か、感染が先か?

「エイズ恐怖症」はいったいウイルス感染か、それとも中国当局が主張する心理的問題なのか?

2008年、林峰さんの母親は上海市の病院で胃の手術をした時に輸血を受けた。家に帰って数日後、リンパ節が腫れ上がり皮膚の表面に発疹ができ、関節の力が抜けた感じがして全身に力がなく、体調が急激に悪化した。その後、林さんの妻と子供にも体調の変化があったが、林峰さんはあまり気にかけなかった。

ある日、母親がガラスの破片で手の甲を切って少し出血した。林さんは破片を片付ける時に自分の手も切り、その傷口に母親の血が付いた。3日後、林さんに母親と同じ病状が現れた。「検査に行ったら、病院側は肝臓か胃に問題があると言った」と、林さんは当時の状況を思い出しながら記者に話した。ある程度医薬と健康の知識を持つ林さんは、自分の病状を客観的に見ることができる。

病院で正確な診断が得られないため、林さんはインターネットで検索して、とうとう「エイズ恐怖症候群」のグループを発見した。絶望と悲しみに満ちた患者の会話を見て、林さんは「心配しないで、恐れないでください。きっと正確な診断をしてもらえるから」と慰めたら、CDC(疾病対策予防センター)の回し者だと誤解されて、グループから排除された。その後、林さんの病状はしだいに悪化し、病院側は手の施しようもない。林さんもしだいに恐怖と絶望の淵に落ちた。

「今年1月、CDCはネット調査をやった時に私に連絡してきて、検査に来てくださいと言った。HIV(エイズ)検査をするだけなら私は行きたくない、私たちは陰性なのでHIVじゃない、と答えた。するとCDCは、正体不明のウイルスを調べたいのでHIV以外の検査もやると言った」

「それで1月17日に私は北京に行った。彼らは半日かけて私にHIV検査をしたが、他の検査は何もしなかった。最後の診断では、私の粘膜組織、皮下組織、皮下脂肪組織はすべて壊れているということだった。精神面は正常と言われた」

「その後私は北京市地壇病院にも行った。地壇病院は2月11日に出した診断書に『精神以外はすべて正常』と書いた。つまり私たちの症状は精神異常がもたらしたものと考えている。これはまさに無責任な言い方だ」

生涯一度も風邪をひいていないという退役軍人の平安さんの感染も奇妙なものだ。「2009年の宴会で、知り合いが私のカップにつばを吐いた場面を私は目撃した。後日、彼もつばを吐いたと認めた。私はすぐに発病して、次々とすべての病状が現れた。数カ月の間、私に接触したすべての家族、親戚、同僚、友人、計100人が感染した。彼らの多くは高い地位を持っている」

「私が衛生部に行って状況を説明すると、彼らは『こんな病気、聞いたことがない』と答えた。中国疾病対策予防センターは『こんな伝染病、あるはずがない。本当にあれば、どうして海外メディアの報道がないのか』と言い、我々を精神異常と見ている。この病気は今ひっそりと広まって、まだ多くの中国人に気づかれていない」と、平安さんは話した。

未知のウイルスなのか

2010年1月、国家CDC性愛センターは「不明ウイルスに感染した」と自ら思う59人について、北京地壇病院で検査を行った。検査項目は常設項目(内科、外科、腫瘍科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、性病科など)、実験室検査(肝機能、腎臓機能、血糖と血液一般検査)、性病・エイズの特異性検査(HIVウイルス測定、CD4+Tリンパ細胞数計量、HIV核酸定性測定、HIV抗体検査ELISA方法、HCV抵抗検査・梅毒特異性抗体検査TPPA法)などがある。

検査結果は、59人ともに微熱、力が出ない、発疹、リンパ節の腫れなどのような非特異的な臨床症状が現れ、日常生活に支障が出ているが、エイズ検査では1人の陽性もなかった。報告では、59人には明らかな病理変化がなく、病状は精神的な原因だと結論を出した。

この報告に基づいて、中国のエイズ専門家はこれらの患者を「エイズ恐怖症」と決め付けた。しかし、この結論に疑問をもつ専門家もいた。上海市公共衛生臨床センターの助理研究員・万延民さんは、「私は一部の患者に会った。彼らの病状は恐怖から由来したという言い方では全く筋が通らない。新型ウイルスの可能性は排除できない」と言った。

台湾の著名医師・王元甫さんによると、この病気はエイズウイルスに似た伝染性を持ち、免疫系の反応を起こし、一種の新型ウイルスである可能性が非常に高いという。躁鬱(そううつ)病などの精神疾患は主に人間の行動異常に限られており、免疫系の反応をあまり起こさない。一方、慢性的ウイルス感染は免疫システムを攻撃して免疫機能を破壊する。この患者たちはみな免疫系の病状を持っているので、ウイルスによる感染症の可能性が非常に高い、と王医師はみている。

中国でも、多くの専門家がそれは一種の未知のウイルスである可能性が高いと思っている。「現在のところ、それはエイズウイルスの新型感染かどうか断定できないが、ある種の未知の新型ウイルスの可能性がある、例えば肝炎ウイルスのようなもの」と、中国CDC性病とエイズ予防治療センターの趙文立主任は言った。

浙江省東陽市の孫氏本草漢方医薬研究所の孫伝正医師によると、多くのウイルスがエイズを誘発しうる。エイズの正式名称は「後天性免疫不全症候群」で、「HIV症候群」ではない。だから「エイズ」と決めるにはHIV抗体への陽性反応を唯一の根拠にしてはならない。「後天性免疫不全」の諸症状を備えるならば、どんなウイルスが原因であろうと、「後天性免疫不全」の定義に合うと指摘した。「もしエイズの症状を全部持っているならば、HIV検査で陰性の結果が出ても病気の存在は否定できない」

精神の疾病であろうと未知のウイルスの感染であろうと、国は検査と治療の責任を取るべきで、「エイズ恐怖症」と言って責任を逃れてはいけない、と米国国家衛生研究院(NIH)の伝染病専門家・胡宗義博士は指摘した。実際には、現在中国で「エイズ恐怖症」は深刻な社会問題に進展して、一部の患者の復讐心理は社会に災難をもたらす可能性があろう。

患者240人が献血で社会に復讐

2008年~09年の間、「港湾」というネット上の患者グループ240人ほどが北京協和病院に行って治療を求めたが、結局全員が次々と協和病院で死亡した。彼らは当初、当局に重視してもらうため、わざと深センから上海まで各都市で献血を通じて感染を拡大させようとしていたという。

「エイズ恐怖症」患者はエイズ、もしくは他の検出できるウイルスをもたないため、献血前の血液検査は容易に通過できる。これで、彼らのウイルスが付いた血液が社会に蔓延した。林峰さんの母親は上海での手術で輸血を受けたため「エイズ恐怖症」に感染し、その後家族全員に感染させることになったが、ここからも「港湾」グループの行動の影響を実証できる。

「港湾」のメンバーはまたにぎやかな都市に行ってホテルに泊まり、多くの売春婦に感染させた。2009年まで、ナイト・クラブのマッサージ嬢から街頭で売春する娼婦まで、多く感染者が現れた。

ネットで「末路」という偽名を使った深センのある女性は、家族全員が「エイズ恐怖症」で死亡した後、自分の体で世界に復讐を始めた。湖北省襄樊市出身のある女性も、自分の身体でこの世界に復讐している。2010年1月CDCの検査に参加した59人の中の一人は献血をしたことがあると告白し、同僚のコップにつばを吐いて同僚にも感染させたと告白した。ある大企業の食堂に勤務する患者は、千人以上の従業員に感染させた。ある油田に勤めていた患者は油田の従業員全員に感染させたという。

2010年1月、CDCはネットを通じて、患者たちにHIVとその他の正体不明ウイルスの検査を行う招待状を出した。期待を抱いて峰さんとほかの患者59人が1月17日に北京に集まったが、HIV検査と通常の健康診断しか行われず、CDCの検査結果に「精神状態は正常」と書かれた。その後、彼らは北京地壇病院で検査を受けたが、2月11日の検査結果には「精神は異常、その他の検査項目はすべて正常」と書かれた。CDCの結果と正反対だった。

政府は「これはエイズではない」という主張を固守し、この病気を新型のウイルスと見なして研究を展開する姿勢が見えない。無数の患者に対して、政府や病院からマスコミまで口裏を合わせて「これはエイズ恐怖症」だという。「京華報」の記者・呉鵬(音訳)さんは林峰さんを取材したことがある。取材の日、呉記者に感染させないように、林峰さんは室内での招待を断り、寒風が吹きすさぶ北京の街頭に立って取材を受けた。しかし、「京華報」の編集長は呉記者が書いた数千字の原稿を読んだ後、「これを報道するなら、仕事を辞めなさい」と冷たく言った。

米国のある華人は患者たちに同情して、自ら資金を出して研究を展開した。研究の結果は、彼らが感染したのは一種の変異疱疹ウイルス、或いはHPV「乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス」とHSV「ヘルペスウイルス」が複合した新型ウイルスで、HIVウイルスではない。このウイルスは人体に対して殺傷力が極めて大きく、現在、特効薬はまだない。

(記者・陳怡蓮、韋拓日本語ウェブ翻訳編集チーム)
関連特集: