【大紀元日本5月5日】温家宝首相はこのほど中南海で、北京政府の施政をたびたび批判する香港の左派勢力の元老と会談したことが明らかになった。首相は会談中、中国の政治改革が「封建社会の遺物」と「文化大革命の遺毒」という2つのうそを好む勢力に阻まれていると語ったという。
温首相と会談したのは、香港特別行政区の元人民代表・呉康民氏である。同氏はこれまでに最高指導部の政策を頻繁に批判し、国内の政治改革を促し続けている。
呉氏は4月23日、公務で北京を訪れた際、中南海で、温首相と1時間半の単独会談を行った。首相夫婦は呉夫婦を招待する食事会をも開いたという。
呉康民氏は香港メディアの取材に対し、今回の会談は日常の話を交わしただけとしながらも、国内と香港の政治問題をも論じたと話した。首相は同氏に、国内の政治改革の難しさを嘆き、「封建社会の遺物」と「文化大革命の遺毒」という2大勢力の存在を指摘、それらの支配により、一部の人は真実を語らず、大きな口を叩き、きれいごとばかりを繰り返す、と漏らしたという。
今回の会談に関して、次の点も注目されている。つまり呉氏は首相から、会談内容と写真の公開を許されている。それにより、呉氏は、首相の夫人・張培莉氏を含む4人の記念写真を公開した。温首相が首相在任8年間で夫人との写真を公開したのは今回が初めてとも言われている。
香港紙・明報は、上記の一連の状況からみて、今回の会談には深い政治的な意義があると指摘し、会談の場所は首相が公務を執行する中南海であり、自宅ではないことから、決して一般的な日常の話の会談ではない、と報じた。
香港の民主派の立法会議員・梁国雄氏は米VOAの取材に対し、温家宝首相は一部の政治評論家から「最優秀男優」と皮肉られており、今回の会談も慣例のパフォーマンスに過ぎない、との見解を示した。「中国国内のメディアはこの会談を報道するはずもない。だから、国内ではだれも本件を知らない。会談の目的は、国際社会に首相の改革派のイメージを植え付けるためにすぎない」と分析した。
親中派メディアは一転して「自粛」
呉康民氏が今回の会談を公表し、写真を公開してから、香港政界では様々な憶測が飛び交う中、親中派メディアの大公報や文匯報、香港商報などは、一時は行っていた報道を、ある時点で突然自粛し始めた。
その状況について、香港紙・アップルデイリーは情報筋の証言として、上層部から報道の温度を下げるよう命じる通達があったと伝えた。
香港の政情誌「開放」の編集長・金鐘氏は、「このやり方は、中国当局の度胸の無さを露呈した。彼らには、公に出来ないものが多すぎるからだ」と評した。
梁国雄氏は、今回の温首相の接待は異例であり、本来は当局の「香港マカオ事務班」が行うべきだと指摘し、その事務班の責任者は習近平氏だという。「ここに次の2点が反映されている。まずは、中共政権の権力交代の過程において、内部の闘争があること。そして、香港にも権力闘争があること。最も恐ろしいのは、これらの権力闘争に関して、中国人も香港人も発言権がまったくないことだ」と述べた。
香港特別行政区の長官の人選について、かつて呉康民氏は文章を発表し、香港の安定を維持できる人が適任であるとの見解を示していた。呉氏は、首相はこの文章を読んだが何もコメントしなかったと語った。