【大紀元日本5月7日】オサマ・ビンラディンの死は中国でも大きな関心を呼んだ。喜ぶ人、同情する人、英雄だと称える人。しかし、北京にある中央民族大学のウイグル人学者のイリハム・トフティ氏は「ほっとした」と語っている。
5日の米VOAの取材でイリハム氏は、「ほっとした」理由は、「当局が長年、ウイグルの問題を意図的にアルカイダと関連づけ、問題を拡大させてきたから」だという。中国政府はウイグルの抗議活動に「テロ」というレッテルを貼り付け、弾圧の口実にしている。
イリハム氏はウイグル関連サイト「ウイグル・オンライン」の開設者。ビンラディン死亡のニュースを受け、サイト上には安堵の声が多く上がり、「ビンラディン、あなたのせいで我々はひどい目に遭ってきたよ」という書き込みもあった。
一方、同日、中国外務省の姜瑜報道官は「中国もテロの被害者だ」と発言し、「『東トルキスタン(新疆)』テロ勢力を討つことは、国際的なテロとの戦いの重要な一環だ」と述べた。
中国外務省がこのような発言をしている頃、世界ウイグル会議がワシントンで開かれていた。ニューヨークの人権団体「中国人権」によると、カザフスタンとキルギスタンは、上海協力機構(3国およびロシア、タジキスタン、ウズベキスタンによる国家聯合)からの圧力がかかり、自国代表としてのワシントン行きを取りやめたという。
9・11後、新疆ウイグル自治区やチベット自治区で起きた抗議活動について、中国当局は、活動の後ろ盾にアルカイダがいると示唆し、新疆ウイグル自治区の独立を求める「東トルキスタン」勢力をテロ組織として国際的なテロとの戦いの標的にしている。「中国人権」の執行主席・譚競蟐氏は「中国政府は今の情勢を利用して、自身の問題を国際化しようとしている」と指摘する。「今度はビンラディンの死を利用して、分裂主義や過激主義をテロリズムとひとくくりにして、新疆問題の解決をはかる狙いだ」
イリハム氏は、ウイグル自治区で起きたいくつかの抗議事件とアルカイダとの関連を裏付ける証拠はないと指摘。「09年7月5日の抗議事件を含め、ほとんどの活動はテロとは無関係。アルカイダ組織の特徴もこれらの活動からは見出せない」。イリハム氏は、ビンラディンは中国をテロの標的にしたことはなく、アルカイダも中国の施設を襲撃したことはないと指摘した上で、「それでも、我々を無理にビンラディンやアルカイダと絡めようとするある種の勢力の存在を感じる。ウイグルに問題があるとしても、その性質はアルカイダとはまったく違うものだ」と主張した。
アメリカ政府は「東トルキスタン」勢力をかつて「海外テロ組織」のリストに載せていたが、昨年11月に公表した最新のリストには同組織の名前はなかった。また、「この組織の一部の過激派の活動が、すべてのウイグル人の抗議活動を弾圧する口実になってはならない」とイリハム氏は主張し、「ビンラディンの情報が多く把握されている現在、ウイグルとビンラディンを関係づける言論はもはや誰も信じない」と当局のシナリオを一蹴した。
VOAは、中国当局が新疆などで行った弾圧の規模と影響の範囲は、すでに「対テロ」という定義をはるかに超えている、という評論家の指摘を報道。中国が意図的に新疆の過激派を海外のテロ組織と関連づけるのは、ウイグル人に対して政治・宗教の統制をはかろうとする当局の行動を正当化するために過ぎないと批判した。