パキスタン、中国当局に海軍基地の建設を要請

2011/05/30 更新: 2011/05/30

【大紀元日本5月30日】パキスタンは中国当局に対し、海軍基地の建設への協力や、中国海軍の同基地での駐留などを要請している。 米パ両国の関係が最近険悪ムードにある中で、パキスタンが中国当局との同盟関係をさらに強化しようとしていると専門家は指摘しており、実現すればインド洋上の軍事力バランスが根底から変わるという見解を示している。

パキスタンのムフタル国防相はこのほど英フィナンシャル・タイムズ紙に、国内のグワダル港の運営と、同港での海軍基地の建設などを中国当局に要請したことを明らかにし、ギラニ首相が先回、中国を訪問した際、正式に中国当局に申し出たという。

パキスタン南西部にあるグワダル港は2002年に着工、2007年に開港し、パキスタンで唯一の大型貨物船に対応できる港となった。当初から中国当局が8割の建設資金を提供している。現在はシンガポールの会社に管理を託しており、30余年後に契約満期を迎える。一部の報道によれば、パキスタン政府は同管理契約の見直しを検討しており、中国当局に管理契約を譲渡することを望んでいるという。

アラビア海に面するグワダル港の南の海域は、ペルシャ湾から東アジア方面に向かうタンカーの唯一のルートであり、戦略的に要衝の地だ。

フィナンシャル・タイムズ紙によると、パキスタンと中国の海軍協力交渉に精通しているパキスタンの高官は「同海軍基地が完成後、中国海軍が定期的に利用し、中国艦隊のインド洋地域における修理やメンテナンスの拠点にもなることを願う」と語った。一方、中国当局はまだ同港での海軍基地建設の要請を引き受けるかどうか、公式見解を示していない。

米国国防省は本件へのコメントを避けている。ある米国政府関係者は、中国最高指導部は長年にわたり、いかなる国であろうとも、国外に軍事基地を保有することに強く反対してきたことを指摘し、かつて、中国当局は国外での軍事基地は永遠に保有しないと表明したことを挙げた。

中国とパキスタンは、インドを共通の「敵」とみなしており、従来から同盟関係にある。グワダル港を軍港化することについて、パキスタンの国防相は、インド海軍に対抗するためインド洋と北アラビア海における中国の存在を打ち立ててもらいたいとの期待を示した。中国国内メディア「中国網」が報道した。

米シンクタンク國際戦略研究所(CSIS)の南アジア問題の専門家アマー・ラティフ(Amer Latif)氏は、パキスタンは一貫して中国を絆の強い盟友と見なしていると指摘し、米パ関係が最近険悪ムードに陥る中、パキスタンがさらに積極的に中国当局との同盟関係の強化をはかっているという見解を示した。「米国政府内部からは最近、対パキスタン援助を削減するらしいという説が出ている。パキスタンはそのことを憂慮しており、この件を介して、米国にメッセージを送る意図だ。すなわち、北京はパキスタンの最も忠実な盟友なのだ」と同氏は分析する。

英国専門家:インド洋上の軍事力のバランスを変えてしまう

英国のシンクタンクである国際戦略研究所(IISS)南アジア安全保障問題の専門家、チョードリー氏は「本件が、中国の国防と安全保障に関係する『戦略的転換点』になることは間違いない」と指摘。フィナンシャル・タイムズ紙の取材に対し、次の見解を示した。つまり、中国当局がグワダル港の管理を引き受け、パキスタンの海軍基地建設に協力すれば、同港で中国の艦隊や潜水艦が駐留する半永久的な権利を得るであろう。これにより、インド洋地区における軍事力バランスが根底から変わるという。

中国に巨大な利益 

CSISのラティフ氏は、本件が実現すれば、同港が中国海軍の初の海外拠点になると指摘。中国当局は軍事利益のほか、貿易とエネルギー供給の分野でも巨大なビジネス利益を得ることができ、また、中国海軍による自国タンカーの護衛も効果的にとりはからえると分析した。

本件について、日本では一部、「中国海軍がグワダル港に常駐するとなると、いつでもタンカーの航行を阻止でき、日本のエネルギー確保のうえで重大な意味を持つ」と懸念する声が上がっている。

(翻訳編集・叶子)
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