【大紀元日本6月22日】18日に召集された国務院常務会議で政府は三峡ダムプロジェクトに移住や生態環境の保護、災害防止などの問題があると認めたばかりだが、ダムの運営会社である三峡集団は19日、長江上流に4つの巨大な水力発電ダムを新たに建設すると発表した。中国の南部に甚大な被害を与えた干ばつと水害の元凶だと指弾された三峡ダムの新たな増設に懸念の声が上がっている。
発表によると、長江上流の金沙江に渓洛渡、向家壩、烏東徳、白鶴灘の4つのダムを建設し、現在の三峡ダムの2倍の規模となる4300万KWの発電能力を持つことになるという。そのうち、渓洛渡ダムはすでに2005年に着工し、2013年から使用開始する見通しで、中国2位、世界3位となる1386万KWの発電が可能になる。向家壩ダムは2006に着工し、来年にも送電開始を予定しており、640万KWの発電能力を有する。
また、中国国内の報道によると、現在金沙江に8つの発電所の建設が計画されており、898万KWの発電が可能だという。さらに、中流の雲南省内にも8つのダム建設が予定されており、三峡ダムの発電能力を上回る2058万KWを有することになる。
中国水利部の資料によると、2007年の時点で、建設中のダムを含めて長江全域で2441のダムが建設されている。長江の上流から支流までダムのないところはない。
ダム乱立の現象に専門家は憂慮している。北京の環境NGO「公衆と環境研究センター」の馬軍代表は「渓洛渡ダムは地震などの災害が発生する確率の高い地域に立地している」と指摘し、「上流でダムを多く建設すると、大量の土砂が上流にとどまり、澄んだ水が下流の水深を深め、下流の湖に流れ込む水量が減少し、湖周辺地域の干ばつを引き起こす恐れがある」と述べた。
馬氏の発言を証明したかのように、長江周辺は今春、「50年に一度」の大干ばつに遭い、国内最大の2つの淡水湖である鄱陽湖と洞庭湖が干上がった。また、政府が発表した資料によると、2010年に洪水による被害を受けた地区の総面積は1786万ヘクタールに達し、前年の倍となった。死亡者数は4570人と前年より41%増だという。
三峡ダムをめぐっては、建設によって生態破壊が進み、中国南部の干ばつと水害を深刻化させたと指摘されており、専門家の間で使用中止を求める声もある。