【大紀元日本7月9日】今年6月、1億元(約12.5億円)の選挙資金で河南省鄭州市の市長選挙に参加するとインターネットで表明した中国人実業家・曹天氏が、その後現地当局からの圧力を受けて逃亡していると中国国内紙が報じた。
ネットでの公開情報によると、曹天氏は河南省在住の43歳。河南大学法律学部を卒業した後、不動産会社「鄭州您好置業有限公司」を設立して大成功した。詩人と作家でもある。2005年に「中国経済改革の優秀な青年10人」に、2006年には「河南省文化名人10人」に選ばれていた。
曹天氏は6月6日、友人のミニブログで鄭州市市長選挙に参加したいと表明し、当選すれば、任期内に市長の報酬を一銭ももらわずに、幹部の汚職を厳しく取り締まるなどと明言した。中国共産党の政治体制下では、高官の任命はすべて体制内部で行われており、自由選挙をまったく行わないのが現状である。曹天氏のこの意向表明に対して、当初から、各方面の支持の声が殺到したもよう。
それから10日後、この億万長者は逃亡生活を始めた。
中国国内の人気週刊誌「南方人物」は、「市長選挙に参加しようとする不動産業者-億万長者から逃亡者に」のタイトルで本件を詳しく報道した。
「曹天氏はいま、鄭州市政府が重点的に注目する人物になっている」「鄭州市国土資源局、公安局、税務調査局が共同チームを結成して、同氏を調査している」などと同誌は報じ、市の主要幹部は記者の取材に対して、そのような事実関係を完全否定したという。
また、同報道によると、曹天氏は国外メディアからの取材を一切受けず、いまは「転々と逃げ回っている。携帯電話も切り、身分証明書も怖くて提示できない」という。
さらに、同報道は、曹天氏が1989年、大学3年生の時に3年間投獄された経歴にも触れた。投獄された理由について、記事は言及しなかったが、米VOAは「天安門事件」が理由だと指摘する。
同氏はかつて自分のミニブログで、「自分は文人に比べてお金がある。金持ちに比べて理想を持っている。理想のある人に比べて実行力がある」と綴った。
逃亡前、今回の選挙参加の動機について、同氏は周囲にこう語った。「(中国政府の)『選挙法』に従い、非民主的な幹部の任命体制を打破したい」、「最初の考えは、河に石を投げて、どれほどの波紋が広がるのかを確かめたい。もし、突破口を広げられるならば、素晴らしい」。
豪州の最有力紙シドニー・モーニング・ヘラルドは中国問題の専門家の見解として、「中国共産党政権下で市長選挙に参加するのは、前例のないことである。今回の一件は中国国民の政治参加の意識を目覚めさせるかもしれない」と報じた。