【大紀元日本7月14日】中国政府はこのほど、鉄鋼やセメントなどの素材産業を中心とする18業種2255社に対して、旧型で小規模な生産設備を年末までに廃棄するよう命じた。米VOAは、同措置は中国の産業構造の改善にとって重要であり、特に鉱石採掘や冶金工業の生産効率の向上に意味があると分析した。一方、命令徹底の可否が今後の焦点とみられる。
廃棄命令が出された18業種の中でも、製鉄・製鋼業の設備廃棄による生産能力の削減幅が大きい。製鉄は96社を対象に計3122万トン、製鋼は58社を対象に計2794万トンの削減が命じられた。
このほか、廃棄命令の企業リストに、石炭精製87社(1975万トン)、鉄合金171社(211万トン)、セメント782社(1億5327万トン)、製紙599社(819万6000万トン)も挙げられている。
中国の粗鋼生産量は世界の約5割を占めている。しかし近年、その過剰な生産能力と低下する生産効率が問題となり、中国政府はたびたび産業構造の改良を試みている。その一環として旧型設備の廃棄を命じた当局は、「過剰な生産力を削減し、鉱石採掘や冶金工業の無計画な発展をコントロールすることを狙っている」と、米金属専門家のジャック・リフトン氏は米VOAの取材に見解を述べた。
「中国の鉱石採掘企業の数は、妥当とされる数をはるかに超えている」。リフトン氏は、このような産業構造がもたらす生産効率は非常に悪いと指摘し、効率化を図りたい中国政府にとって、今後まだ長い道のりが待っている、と語った。
中国工業情報化省の朱宏任チーフエンジニアは今年1月に、2011年の中国の粗鋼生産量は7億トンを超えると予測していた。今回の削減計画に予定されている約6000万トンの生産力はその8%超を占めている。リフトン氏は、短期的には、今回の設備廃棄による生産力削減は中国国内市場における鉄鋼価格の上昇につながると予測する。
それでも、政府があえて削減命令を打ち出した背景には、鉱石採掘と冶金工業の生産力過剰問題が深刻であることが窺えるとリフトン氏は分析する。
リフトン氏によれば、中国の金属市場の価格形成システムは、現在の重複生産と悪性競争によって正常に機能していない。多くの企業は目先の目標のために技術革新と効率向上を怠ってきた。政府が生産能力の削減に踏み込んだのは、短期的な価格上昇という痛みがあっても、長期的な産業構造の改良を図ろうとしているためだ、とリフトン氏は指摘する。
「中国の鉄鋼業界の企業は、常に多数の企業との競争を強いられてきたため、能率アップのために巨額の資金を投じる余裕はなかった。しかし旧型設備の廃棄命令は、一部の企業を生産停止に追い込むと同時に、これらの企業が優良企業に吸収合併されることになる。これによって、優良企業は今後さらに技術革新への投資を拡大させることができる」
一方で、旧型設備の廃棄で生産能力を削減するよう命じるかたわら、新型設備の建設計画も進めている中国政府の方策が、果たして生産力の抑制につながるかどうかは未知数とされる。さらに、地方政府や管理・監督部門と密接な関係をもつ企業もある中、政府の廃棄命令がどこまで徹底されるかが焦点とみられる。