【大紀元日本9月13日】中秋節連休前の9日、湖南省邵陽県で里帰りする小中学生を乗せた客船が沈没する事故が起きた。船は学校側が借り切ったもので、公式発表では、乗客50人のうち12人が死亡、小学生1人、中学生8人が含まれる。一方、国内ニュースサイト・財新網など複数のメディアは、沈没した船に90人以上が乗っていたと報じている。当局の死者隠し疑惑が浮上している。
定員14人の船に90人以上か
「沈没船には80~90人ぐらい乗っていた。50人のはずがない」。財新網の10日夜の取材に、現地の同業船主はこう答えた。
10日夕方の公式発表で、それまで公表していた乗客45人を50人に修正したばかりだった。
それでも「違う」とこの船主は言っていた。船主によると、沈没した船は幅2メートル、長さ12メートルの小型渡し船で、定員は14人。しかし、「いつも20~30人は乗せていたし、多いときは大人50~60人は乗せている」という。「これまでなにも起こらなかった」と船主は話した。
同船主は事故直前に船を目撃しており、「80~90人ぐらいいた」という。船舷は水面から10センチも離れておらず、「50人のはずがない。50人だったら、大人でもあそこまで船体が沈むことはない」と船主は証言している。
沈没船に乗っていた13歳の曾琴さんも上海の東方衛星テレビに、90人以上は乗っていたと証言する。「なぜ知っているのか」との質問に、「定員超過だから、乗る時はみんなで数えてみた」と答えた。
ハンドルネーム何兵のネットユーザーは曾琴さんの話として、「船に90人以上乗っていた。しかし先生は30~40人ぐらいと言うように指示した。学校側が借り切ったものとは言わないようにとも言われた。でも亡くなった友達のことを思い、やはり正直に言った」と微博(マイクロブログ)に書き込んだ。上海紙・東方早報も、沈没船から逃げた船主は現地村民に乗客は97人いたと話した、と報じた。
曾さん自身は事故当時、「結構混んでいた」船の真ん中にいた。隣にいた同級生の男の子に助け出されたという。
事故原因の1つは、川砂の過度な採掘か
事故原因として、過積載以外に川砂の過度な採掘も報じられている。北京紙・京華時報の報道によれば、沈没事故の直接の原因は、船が川砂の採掘船のワイヤーに引っかかったためだとされている。
事故現場の川では無許可での川砂採掘がさかんで、水深はそれによって深くなり、川のあちこちに、作業で残された砂利が積まれている。現地村民は、川砂の採掘は船の安全航行を脅かしているが、売れば大きな利益となる砂採取業には村の幹部が絡んでいるため、何回か抗議したが効果はなかったと語った。
事後処理は「スピーディー」
このような事故はいつも波紋が広がる前に、「スピーディー」な収束がはかられる。今回も例外ではない。事故翌日の10日、地元の副県長、鎮長、市の海事責任者が解任された。
また、賠償金をめぐる交渉もすでに落着。10日夜、全遺族が地元政府が提示した1人14万元(約170万円)の条件を拒否した後、賠償金が20万元(約240万円)に引き上げられた。12日には、全遺族がこの金額に同意したという。
財新網の報道によれば、12日深夜1時半の時点では10人の遺族がサインしたが、2人の遺族は拒否。そこで、邵陽県の県長らが「今晩はなんとしても」などと説得し、最終的にサインをしたという。
11日の昼に県民政局の楊衛東局長は財新網の取材に、「すでに3人の火葬は終わっている。残りも今日中に終わらせ、明日は中秋節で休みだ」と話した。これは邵陽県が所属する邵陽市の市長の指示だという。結局12日にずれ込んだ最後の2人の遺族の説得に精を出す県長らの行動は、この指示に基づいたものとみられる。
遺族らがサインした書類には、賠償金の条件が提示されているほか、「賠償金を受け取った後、如何なる訴求もしてはならない。陳情も抗議もしないものとする」と明記されている。