【大紀元日本9月17日】カナダでは8日、与党保守党の国会議員で外相秘書官を務めるボブ・デチャート氏と中国国営通信社の新華社駐トロント支局の首席記者・施蓉氏との親密メールが明らかにされた。カナダでは、この一件への関心が高まっている。多くの主流メディアは各方面の情報を収集し、新華社を中国政府の情報機関であると報じており、本件は中国政府のスパイ工作の一環ではないかと懸念されている。
今回暴露されたのは、デチャート議員が昨年4月に、施蓉氏に送った親密メールである。メールは何ものかによって盗み出され、240以上のメディア、学術関連機関、政府機関に転送された。本紙も同転送メールを受け取っている。メールには、「君はとても綺麗だ」「そうしているときの君が好きだ」「君がいなくて寂しい」「午後6時半に投票がある。時間があったら、テレビかパソコンで見てください。君に笑顔を送る」などの文言が並べられており、カナダのロイヤル銀行への取材に触れたメールもあった。その中で、同議員は彼女に対して、「報道を書くための情報を十分得られたか」と聞いていた。現時点において、デチャート議員がこの取材のパイプ役を務めたかどうかはまだ不明だという。
デチャート議員は翌日声明文を発表し、メールは軽率だったと認めたが、2人の間は友人関係だと釈明した。施蓉氏はメールボックスに不正にアクセスしたのは夫だと明らかにした。
デチャート議員は2008年に国会議員に初当選した。外相秘書官を務めるほか、カナダ中国立法協会(Canada-China Legislative Association)の副会長でもある。2009年には、ハーパー首相の中国訪問に同行していた。
カナダの有力紙グローブ・アンド・メールは12日の関連報道で、欧米の関連政府機関は新華社を中国の諜報機関とみなしているなどと伝えた。
カナダ最大の日刊紙トロント・スターはこの点に関して詳細に報道している。同紙駐中国特派記者ビル・シラー氏による13日の関連報道では、匿名の中国メディア記者の証言を引用。
証言によれば、中国政府の諜報員は新華社駐各国の支局に派遣されている。これらの「記者」は時々ニュースを書くが、主な仕事は情報収集である。この記者が所属するメディアでは、国外に送り込まれる一部の記者は報道の仕事経験がまったくなく、業界内の者でもなく、国家安全部(注・中国の諜報機関)の者であるという。通常外国で数年間活動するが、そのうち姿を消し、二度と現れなくなる。
証言した中国人記者は、このような諜報員は非合法な手段で情報収集する必要がないと指摘した。「記者として、彼らは様々な人と接することが可能になる。だから、非合法な手段をあまり使わなくても任務を果たせる」と話した。
カナダのブロック大学政治学部の教授、中国問題の専門家チャールズ・バートン氏はカナダの国営ラジオ放送局の取材で、新華社はメディアの利便性を利用して、中国の情報機関に従事していると指摘。「その約4分の1の報道関係者はプロの記者ではなく、情報機関のために働く人である」と同教授は話した。
カナダの上院議員で、中国に仕事の関係で5年間在住していた元ジャーナリストのジム・マーソン氏は、グローブ・アンド・メール紙の取材に応じ、「新華社は中国政府の宣伝機関で、その喉舌である。このことをしっかりと認識すべきで、彼らと接するときは非常に慎重でなければならない」と警鐘を鳴らした。
また、今回の一件が発生した後、カナダのメディアは安全情報局(CSIS)のファーデン局長がかつて発した警告を取り上げている。
昨年、ファーデン局長はメディアの取材で、カナダ政府の一部の高官が外国政府の影響を受けていると指摘し、カナダ社会への浸透を試みる外国勢の中で、中国政府はもっとも積極的であるなどと述べた。今年6月、同局長が議会に提出した安全情報局の年度報告書では、この問題が再び提起されており、「これらの外国諜報機関はカナダの情報を収集して、個人と団体への監視を行ったり、多民族社会を対立させたり、カナダの国家政策に影響を与えようとしたりしている」と強調し、この影響力に憂慮すべきだと述べた。
一方、駐オタワの中国大使館は14日、今回のスキャンダルは、国会議員と施蓉さんのプライベートな問題であり、中国政府は関連のコメントは出さないことを示し、「本件を利用して中国政府を誹謗中傷するのは無責任な行動である」とけん制した。