中国の自殺 都心部より農村部、男性より女性が高いワケ 

2011/10/04 更新: 2011/10/04

【大紀元日本10月4日】世界自殺防止日9・10の前日である9月9日、北京心理危機研究・関係センターは、「13億人の中国では、毎年29万人が自殺する」という高い自殺率を発表した。うち79%が農村部在住のもので、その割合の中でも男性よりも女性のほうが25%も高い。

この報告書では、中国は、「世界で唯一女性の自殺率が男性を上回る国」で、その比率は5対2になるということも明らかにされた。

世界的に共通する「都心部在住者、男性のほうが自殺率が高い」という一般的な自殺率の説とは反対の結果が、中国では現れた。最近の調査では、日本では22パーセント、韓国では17パーセントがそれぞれ男性のほうが自殺率が高いことが分かってる。

広州日刊紙・広州日報によると、中国の自殺者の数は、80年代の革命時期よりほぼ60パーセント増加したと伝えている。中国の自殺率の数値は、フィンランド、ハンガリー、日本のそれと肩を並べる。

改革開放制度導入以後、急激な経済成長を遂げてきた中国だが、この数字は何を物語るのか。女性の自殺率の高さは、中国伝統のものなのか、あるいは毛沢東以後の改革制度がもたらしたものなのか。「平和と対立研究所IPCS」調査研究員、ナムラタ・ハシジャ(Namrata Hasija)氏は分析する。

世界保健機構(WHO)の公表した調査報告書によると、中国では4分間に1人、女性が自殺を試みているという。毎年、165万人もの女性が自殺を試み、そのうちの10パーセントに値する15万人の命が、実際に絶たれている。

また同じ調査報告書によると、その多くは農村部に集中し、年齢は15~34歳で、自殺に至る主要な原因は夫婦関係の不和が62.4パーセント、経済的な困難が40パーセントとなった。

この結果を理解するに当たり、1979年に取り入れられた改革開放制度との因果関係に焦点を当てる必要がある、とハシジャ研究員は見ている。

土地の公有化制度の導入により、大多数の男性農民が仕事を求めて都心部へ移住していった。農村部には必然的に女性が残され、農業に携わる女性人口が徐々に増加していった。

中国では伝統的に、農家に嫁いだ女性は「購入した商品」のように見なされ、生活の中において大変な苦労を重ねている。こうした男女間の不公平は、彼女たちへのストレスをさらに背負わせることになった。

中国の農村で伝わる古いことわざがある。「娶来的老婆買来的馬,任我騎来任我打:女と結婚することは馬を買うこと、いつでも好きなときに乗ることが出来、叩くことが出来る」伝統的に家畜のような扱いをうける中国農家の女性たちが、一刻の感情の爆発で、苦しみから逃れるために猛毒を口にする。

北京心理危機研究・関係センターの同報告書には、58パーセントの自殺者は、農薬や殺鼠剤を飲んで自殺しており、亡くなった75パーセントの屋内には上述の毒薬が置かれていたという。このように、猛毒な農薬がすぐ彼女たちの手元に届くところに置かれているため、取るに足らない些細なことでも自殺を試みてしまうという環境にあることが問題であるとも指摘されている。

最近、夫が夜中にテレビの電源を切ることを拒んだために、睡眠できないとして妻が自殺未遂をはかった事例が報告されている。

「銃社会」で知られるアメリカのある州では、銃の購入者に対して、すぐには銃を手渡さずに数週間の期間を置いて送られるという。これは、凶器になりうる銃に対して、冷静に取り扱える精神を持ちうる人物かどうかを試す期間でもある。

実際に農村部で自殺に関する人間心理の調査を行った専門家が、「彼女たちの一部は全く死のうとしたのではなく、自分を虐げられる立場に置いた人々へ、環境の改善を図るよう何らかの訴えを起こすためのものだった」と分析している。

農村部に精神医療機関が大変少ないことも要因の1つとしてあげられる。同じ報告書には、63パーセントの自殺者に精神疾患があり、そのうち80パーセントは鬱病で、たった9パーセントしか精神科の治療・相談を受けていない。

中国ではまだ躁鬱や精神病について「西側諸国の現象」とみなす傾向があり、医療社会の現場では重大な問題と扱っていない。その結果、農家の女性たちを救える精神科医やメンタルヘルスケアを行える医療機関が存在しないのが実情だ。

この農村部女性の自殺問題を取り上げ、解決を図るソーシャルグループが最近、誕生してきた。例えば、自殺者の28パーセントが教育を受けていないことをうけ、職業訓練機関や、結婚や自殺、性などの教養を身につけるための教育機関、あるいはただ単に単調なライフサイクルに変化を与えるべく文化活動の参加を促す機関など、多くはここ最近、急成長を遂げている。

しかし農家にとって、嫁の問題が「部外者」と協議されるということへの抵抗は根強い。上記の試みが成功するのはごく一部のケースに限られる。

猛毒農薬の使用禁止と、女性の都市部移住が、自殺率の低下に繋がったと多くの研究は示している。これに対してハシジャ研究員は、農薬の使用禁止は根本的な問題解決にはならないと指摘し、「農業人口の女性化が、女性自殺率の増加につながっている」と締めくくる。

(編集・佐渡 道世)
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