【大紀元日本10月10日】2000年以上続いた中国の君主政治を終わらせ、アジア初の共和制国家を樹立した辛亥革命(1911年)から今日で100周年を迎える。中国国内では新たな「革命」への厳戒態勢が敷かれる中、北京の人民大会堂で大々的に記念式典が開かれた。今回の式典で、100年前の辛亥革命を利用して台湾独立の動きをけん制し、中台統一をはかろうとする北京当局の姿勢が前面に出された。
「辛亥革命を記念する資格はない」
辛亥革命が唱える「民主共和」と大きく乖離する共産党政権の強権政治。その政権の中枢である9人の中央政治局常務委員9人が全員、9日に開かれた記念式典に出席した。ドイツ政府系メディア、ドイチェ・ベレは、北京当局が記念行事を開催する動機は「辛亥革命の核心価値から完全に離れている」と批判した。
「共産党政権にとって辛亥革命の最も重要な意義とは、中国の民主化革命の推進ではなく、清王朝を終焉させ、その後の共産党の台頭に道を敷いたことである」と指摘する。
また記事は、辛亥革命は民主革命であるのに対し、共産党がその後に行った革命は私利私欲のための政権奪取の革命であると批判。その目的が実現された後も、一連の政治と人権に及ぶ災難で国民を苦しめた党は、庶民とは相反する立場に立つと非難した。
そのため、政権の指導部が辛亥革命を「記念」する一方で、民間での記念行事が禁止されている。民主活動家らに対しての監視が強められており、各地の路上警備も増強されている。「まるで叶公好龍(龍が好きだという叶公が本物の龍を恐れる)だ」。記事は中国の故事成語を用いて中共の矛盾する姿勢を揶揄した。党は、口先では辛亥革命を称えながらも、内心では同様な革命が起こることを極度に恐れている。
さらに、記事は現在の共産中国と辛亥革命後の中華民国の時期とを比較した。「文化、環境、人文などにおいて、いずれも明らかに後退している」と指摘。「現行制度や指導者の操行からいうと、当局は辛亥革命を記念する資格はない。それなのに、堂々と大々的に行っていることはまったくの茶番劇だ」と痛烈に批判した。
「統一」への野望
記念式典では胡錦濤国家主席は「重要演説」を行い、「中国共産党員は孫中山(孫文)先生の革命事業の確固たる支持者であり、最も忠実な継承者である」と自らの正統性を称えた。また、演説で「孫中山先生や辛亥革命が主張した中華振興の大願は海峡両岸(中台)の同胞がともに追求すべき目標」「現在、両岸の人民は、ともに中華民族の偉大な復興を実現する歴史的チャンスを迎えている」と台湾統一を訴える表現が随所に見られた。
今まで中共が辛亥革命を記念する目的は、共産党こそ孫文や辛亥革命の精神を受け継いだとアピールすることに止まっていたが、今回の100周年記念では「統一」への野望をあらわにしていた。
民族・民権・民生という孫文が掲げた三民主義において、胡主席が強調したのは民族主義。演説の中で、「中華民族の偉大な復興」という表現を23回繰り返した胡主席は、台湾側に「平和的な方式で統一を実現することは台湾同胞を含む中国人民の根本的な利益に最も合致するものだ」と呼びかけ、孫文が提唱した民族主義を用いて「統一」への目論みを前面に出した。
「民主共和に道遠し」
一方、三民主義の「民権」と「民生」には触れていない。100年前の辛亥革命は2000年以上続いた専制統治を打破したが、1949年からの共産党政権でまた専制統治に逆戻りした。今の中国では、民主・自由を求める活動人士が監視され投獄されており、厳しい情報統制の下で人々は真相から遠ざけられ弱者が切り捨てられている。際限ない開発で自然環境の悪化が深刻さを極めており、社会道徳も地に落ちている。食品問題や鉄道問題、庶民の日常に不安が溢れる。「民権」の萎縮と「民生」の困窮。継承者と自任する共産党政権の営みは孫文が掲げた三民主義からほど遠い。
「『民権』を尊重しない国は『民族』の復興など実現できない」とドイチェ・ベレの記事は断言し、辛亥革命100周年に際し、当局は「自己満足ではなく、負い目と後ろめたさを感じるはずだ」と指摘した。
中国人民大学の張鳴・政治学教授は、100年前は中国が制度の変革を迎えていたが、100年後の今も変革が迫っていると指摘。100年経っても中国は現代国家を建設する使命が果たせていないとの見方を示した。また、中国社会科学院の姜涛氏は、中国では「真の民主、平等は今も実現できていない」とし、孫文が目指す「民主共和には道が遠い」と語った。
一方、辛亥革命のもう一人の当事者・台湾では10日、「中華民国建国」を祝う100回目の式典が開かれた。辛亥革命の翌年に成立した中華民国は、台湾で存続しているという立場をとる。
9日の記念活動に参加した馬英九総統は、「国父・孫中山が中国大陸で実現できなかった理念を、台湾で徐々に実現してきた」「今日、台湾で実現された自由と民主は、国父の革命に恥じることはない」と、辛亥革命の精神を継承したのは台湾だと主張した。