プーチン首相訪中 欧米けん制で一致 経済協力拡大へ

2011/10/13 更新: 2011/10/13

【大紀元日本10月13日】ロシアのプーチン首相は11日から2日間の日程で中国を公式訪問した。来年3月の大統領選への出馬を表明して以来、初の外遊となった。同首相は今回の訪中で、双方の経済協力の増進を前面に出し、国営天然ガス会社のガスプロムや石油会社ロスネフチルの幹部らを含む160人のロシア経済界の重鎮も同行させている。

ただ、プーチン首相の訪中の意味はそれだけにとどまらない。中ロ間の多角的な戦略関係を構築することで欧米けん制をはかることも、目的の一つとなっている。

経済協力強化するも、天然ガス合意に至らず

急速に成長する中国はロシア産石油・ガスの最大の消費市場に浮上している。温家宝首相は11日、プーチン首相との会談後に、「パイプライン原油貿易価格で完全一致に達した」と記者らに語り、原油取引きにおける見解の不一致を克服することをアピールした。双方はこれまで、ロシア国内における石油の輸送費用をめぐって意見が分かれていた。

なお、焦点となる天然ガスの交渉は大詰めを迎えたものの、合意には至っていない。2016年から30年間にわたり、毎年680億立方メートルのシベリア産天然ガスを中国に供給するこの交渉は、すでに5年間続いている。総額1兆ドル(約76兆7000億円)の潜在的価値のある同プロジェクトにおいて、ロシア側は国際原油価格と連動させ、1000立方メートル当たり300~400ドルを提示していたが、中国側は石炭の国際価格を基準として、200ドル以下を主張していた(朝鮮日報)。

合意への期待が寄せられた今回の交渉は、プーチン首相訪中の日となる11日に、ノーボスチ通信がその可能性を否定した。同報道によれば、双方が先月行った交渉で依然として価格基準と計算式をめぐって見解の対立が残っている。さらに同日行われたプーチン首相の記者会見でも、首相は「いつになっても、売るほうは高い値段で売りたいし、買うほうは低い値段で買いたい」と、交渉は最終段階に入ったものの、価格交渉がまだまとまらないことを示唆した。

一方、プーチン首相は11日、温首相との会談後に、ロシアは最新技術を基盤に原子力分野で中国との協力を発展させる意向を明らかにした。

中ロ間の経済貿易額は今年700億ドルに達する可能性があるとされており、2015年には1000億ドル、20年には2000億ドルに達すると見込まれている。「中国は今やドイツを抜いて、ロシアにとって最大の貿易相手国となった」。ロシアのユーリイ・ウシャコフ首相府副長官は10日このように述べたうえで、「ただ、ロシアの中国向け輸出品の70%以上が、天然資源や原料で占められている」との不満もこぼした(ヴォイス・オブ・ロシア)。今回のプーチン首相の訪中では、宇宙航空や農業、環境保護などの分野での協力多様化もテーマとして取り上げられている。

欧米けん制という共通利益

中ロの蜜月ぶりとは対照的に、米中関係の冷え込みが目立ち始めている。対中為替制裁法案が米議会で可決され、少し前には台湾への58億ドルにのぼる武器売却計画が発表され中国の「強烈な憤慨」を招いたばかり。ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)は、次期大統領と確実視されるプーチン首相のこのタイミングでの訪中は明らかな政治・外交的意味をもつと分析する。

米ルイビル大学(ケンタッキー州)政治学部のロシア問題専門家チャールス・ツィーグラー氏は、ロシアの勢力が衰退化している今、中国と手を組めば、国際政治において米国をけん制するのに有利であり、双方にとって有益であると指摘する。そのため、プーチン首相の訪中は、中ロが国際問題で歩調を統一させる予行演習だとみられている。

このような同調はすでにシリア問題で現れている。米VOAがロシアメディアの報道を引用して、中ロはいずれも、中東・北アフリカの民主化運動に対して反感を持っており、特に外来勢力による国内デモへの支持で政権が脅かされるのを恐れている、と報じている。両国がともに国連安保理でシリア非難決議に拒否権を発動したことは、こういった自身の利益を踏まえた上で、大きな国際問題で連携を強めるという構図を印象づけた。

中国の政府系メディアはプーチン首相の来訪を大仰に喜んでいる。米国に次ぐ世界第2位の軍事力を保有するロシアと連携すれば、中国に対してけん制を強めている米国や日本に対抗できると目論んでいるからだ。国営新華社は、プーチン首相の訪中を「世界をさらに多角的にした一歩」と称え、中ロが連携すれば、国際政治が「もっとバランスが取れる」と評した。ロシアと中国は「西側諸国による度重なる内政干渉の企みを阻止した」と、対抗姿勢を押し出している。

ただ、対外的に連携を強調する中ロ間でも争いが絶えない。プーチン首相の訪中が迫った5日、ロシアの情報当局が「地対空ミサイルS-300の情報を入手しようとした中国人を拘束した」と公表した。実際の拘束は約1年前の昨年10月下旬のことであることから、この発表は、ロシア側が首相の訪中を有利に運ばせるためのものだという見方がある。「中国の成長はチャンスよりも脅威」。ロイター通信は、ロシア国内にある一部の意見を伝えている。

(翻訳編集・張凛音)
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