【大紀元日本10月26日】中国内モンゴル自治区で再び、モンゴル人が草原を破壊する漢族のトラックを阻止する際に引かれて死亡する事件が発生した。漢族から草原を守ろうと現地遊牧民が命を懸けた、最新の事例である。
南モンゴル人権情報センターの代表であるトゴチョグ・エンフバト氏によると、同自治区のオルドス市烏審旗在住の遊牧民・ツォル・バトゥさんは20日、自家の草原が破壊されてしまうことから、草原の上を通行する漢族のトラックを止めようとしたとき、運転手は故意に危険運転を繰り返し、彼を轢いて死亡させた。同自治区内において、同様の死亡事件はこれが2件目となった。
今年5月10日、遊牧民・莫日根さんと仲間たちは、草原を走行する石炭運びの漢族のトラックを遮ろうとした際、故意にはねられて150メートル以上引きずられた後即死した。同事件により、現地では30年間で最大規模のモンゴル人抗議活動が発生した。
一方、中国政府の機関紙・新華社は今回の事件について、交通事故であると報じ、加害者の運転手はすでに現地の公安当局に逮捕されたと伝えた。
それに対して、南モンゴル人権情報センターのトゴチョグ・エンフバト代表は「これは絶対に単純な交通事故ではない」と反論した。同氏は現場目撃者の証言として、当時の状況を説明した。それによると、ツォル・バトゥさんがバイクでトラックを追いかけていた時、運転手は故意に激しい蛇行運転を繰り返したため、ツォル・バトゥさんを轢いてしまった。
「これは遊牧民の正当権益が侵害される事件だ。漢族はモンゴル人の権益を完全に無視している。経済利益を追い求めるため、草原を深刻に破壊して、炭鉱などの天然資源を限りなく貪欲に開発している。その一方、遊牧民は生存する源である草原を守るため、命がけで抗争している」とエンフバト代表は指摘した。
同代表によると、今回の死亡事件が発生してから、現地の多くの遊牧民は抗議活動を始めた。前回の事件の教訓から、中国当局は警戒を強めている。
今年5月の莫日根さん死亡事件の後、大規模抗議デモの発生を受けて、中国政府は内モンゴル人の権益を最大限に考慮して、炭鉱の生態環境と遊牧民の利益を守ると約束した。
半年経った今、状況はどうなったのであろうか。エンフバト代表はボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対して、次のように語った。「現状はまったく変っていない。中国政府の約束事は一つも実現していない。むしろ、状況はますます悪化する一方だ」
2005年から内モンゴル自治区では、漢族による石炭採掘が盛んに行われ、現在、同自治区の石炭産出量は中国一となっている。遊牧民は政府に環境破壊への懸念を訴えてきたが、対策が講じられていない。採掘が進むにつれ、石炭運搬のトラックが昼夜を問わず草原の上を走り、遊牧地の砂漠化は深刻化する一方である。
豊富な資源が漢民族に略奪され、環境の破壊で生計を脅かされてしまった遊牧民らは危機感を募らせ、自発的に反対運動を行っている。
同代表は中国政府に対して、古くから遊牧の伝統を持つ内モンゴル人の生存権と文化を尊重するよう求めた。「内モンゴル人が要求しているのは独立や自治ではない、ただ、自分たちの基本的な人権と自由だけなのだ」
(翻訳編集・叶子)