【大紀元日本11月1日】人民日報傘下のニュースサイト・人民網は28日、2005年から09年まで毎年7000の行政村が減少し、毎日20の村が消えていると報じた。出稼ぎなどにより農村人口が流出、耕地が放置されてしまうという現象が深刻化し、食料の安定供給に影響を与えることが懸念されている。
農村から消えた若者の姿
「子供を除けば、46歳の夫婦が村で一番若い労働力」。河北省崇礼県西毛克嶺村の関係者はこう話す。現在、村に戸籍を置く人は458人いるが、実際に生活しているのは216人。若者のほとんどは出稼ぎをし、60歳以下の労働人口はわずかだという。
山西省臨汾市永和県趙家溝村も似たような状況にある。登録人口234人のうち、居住者は130人で、残っているのは年配者と子供。今年6月に行われた調査で、湖南省、内モンゴル自治区なども同じであるという。農業を経済の柱とする中国の中部地方から若者の姿が消えている。
2006年、国務院発展研究センターが17つの省の農村部を対象に行った調査によると、74%の農村では出稼ぎの可能な農民は一人も残さず全員村を出ており、75%の農村に40歳以下の労働力がすでにいないことが分かった。
さらに、農村の出生人口が一人っ子政策で年々減少している。これまで一つの世帯に4人の子供が普通だったが、今は1~2人がほとんどだ。それに出稼ぎ労働者の親と共に、都市部に出ていく子供も少なくない。
5年が経過した現在、状況は深刻化する一方だという。湖北省にある浜湖村の場合、2008年に放置された耕地は40%に達し、二毛作の耕地の半分以上は一毛作になっている。
同センター農村部農業生産力研究室の元主任・姚監復氏は、「農村人口の大量流出は『三農問題』(「農業」の低生産性、「農村」の荒廃、「農民」の貧困)の中でもっとも突出している問題となっている」と述べた。
「働けば働くほど赤字」、農業離れの現実
前出の姚主任は「石油や肥料の価格高騰で、政府からの手当てをもらっても、農業から十分な収益を得られない。出稼ぎで良い収入を得られるため、耕作に従事する人が減っている」と指摘する。
人民網も28日の記事で、耕作から得た収入が少ないことが農民の耕地離れを引き起こしている、と述べた。
山西省趙家溝村の村民の話によると、2010年に24畝のトウモロコシを栽培し、3万元の収入を得たが、農薬、水道代、電気代などの諸費用が1.3万元掛かり、繁忙期に人を雇ったときの人件費、自身の人件費を入れると、ほとんど収益はないという。天候不順や虫害に遭うと、コストが膨れ上がり、赤字になる。
さらに、都市部と農村部の格差が拡大するにつれ、苦労しても報われない農業より、ほとんどの若者は都市部へ移住するという強い願望を抱いている。
専門家:土地制度が問題
中国農業部傘下の「農産品市場週刊」の黄良天責任者は、「行政村の減少と耕地放置の増加は農村土地の現行制度と関係している」と述べ、「現行の土地制度は時代にそぐわなくなった。農民は土地を所有しておらず、割り当てられた土地には愛着がない。ほかに収入を得る手段があれば、すぐ離れてしまう」と分析している。
一方、土地の強制収用をめぐる事件は年々増えている。中国国土資源部が発表した資料によると、今年9月まで全国で違法の土地収用事件は3万7千件が発生し、その81%が中部と西部で起きているという。さらに、事件の多くは地方政府の主導で行われている。
黄氏は土地制度を改革しなければ、農業の発展に壊滅的な打撃を与えかねないと指摘する。「土地の所有者がはっきりしていないため、政府主導の違法収用事件が多発している。土地がいつ奪われるかが分からないため、農民はどんどん離れていく」と述べた。