【大紀元日本12月2日】ミャンマーを訪問中のクリントン米国務長官は1日、首都ネピドーでテイン・セイン大統領と初めて会談した。会談の中で、大統領は両国関係が「新たな章」に入ったと語り、対米関係に期待感を示した。
北朝鮮、パキスタンと並び、中国の三大盟友の一角を占めたミャンマーは、今年3月に軍事政権を脱してから中国離れが本格化している。米国務長官の57年ぶりの訪問の実現に加え、新政権が新しく任命したミン・アウン・ライン国軍最高司令官は、今まで数10年間継承してきた、就任後最初に北京を訪問するという慣習を破ったことも注目されている。11月28日、同司令官が北京を訪問したが、その前の3日には米国のミャンマー特別代表ミッチェル氏と会談し、また14日には、米国と関係強化をはかっているベトナムを訪問した。
ベトナムの後に中国を訪れたミン司令官に、中国の習近平・国家副主席は、中国とミャンマーの友情は「時と国際情勢の風雲変幻の試練に耐えてきたものだ」と釘を刺した。
まさにこの風雲変幻の中で、ミャンマーは大きな変身を遂げつつある。10月には大赦令が実行され、有名な政治犯も含む6千人以上の囚人が釈放された。アウン・サン・スーチーさんが率いる民主化勢力との和解も進められており、メディアやインターネットへの統制も緩和された。
これらの民主化の動きに中国は苛立ちをつのらせている。これまでの軍事政権下のミャンマーに、中国は経済や軍事など多分野にわたって支援をしてきた。一方で、中国もミャンマーから鉱物や木材、天然ガス、石油などを輸入している。中国西南部からミャンマーの港に敷設されるパイプラインは、中東から中国国内に原油を運ぶコストを下げ、安全性を高める。
ミャンマーの中国離れは中国が重要な盟友を1人失うことを意味するだけでなく、こういった利益が脅かされ、さらにアジア太平洋地域で中国がますます孤立することを意味する。中国資本援助によるミッソンダム建設が9月に、「国民の意に反する」としてテイン・セイン政権に中断されたことについて、人民日報傘下の環球時報は「これは中国人の損失」「中国の利益を犠牲にして、西側に媚びる予兆だ」と不快感をむき出しにした。
ミャンマーの「国民の意」は9月に掲載されたミャンマー紙の記事からも読みとれる。11月30日付の豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドの紹介によれば、ミャンマー政府高官と前軍部将校によるこの記事では、「我々は中国の衛星国になりたくない」とし、「中国人はミャンマー北部で木材などの自然資源を略奪している。(ミャンマー第2の都市)マンダレーには、中国人が全人口の4割を占めている」と危機感を表した。さらに、軍部も「ミャンマーの中国従属化」に懸念を抱いていることが明らかにされた。
今回のクリントン長官のミャンマー訪問はこういった動きを決定付けた。訪問について、環球時報は「中国のアジアでの仲間を、1人また1人と米国にさらわれていく」と批判する社説を掲載した。
「ミャンマーが西側に開放することに中国は抵抗がない。しかし、開放することによって、中国の利益をバサリと切るような乱暴なやり方を中国は受け入れられない」とミャンマーへの不満をあらわにした。
また、中国の外交は「ベトナムとアルバニアが(中国に)反目」して以来、特殊な国家関係を避けてきたという。「ミャンマーはアルバニア化していない。北朝鮮のアメリカ対抗も自身の利益に由来するもので、中国の戦略に迎合するものではない」「期待が高くなければ、失望もない」。社説に中国の焦りと苛立ちがにじんでいた。