【大紀元日本1月6日】重い持病を持つインド人外交官と2人の貿易商が中国で乱暴な扱いを受けたとして、インド政府は4日、公式に中国へ抗議した。中国当局は暴行事実を否定しているが、この事件により、1カ月後に予定されていたチベット精神指導者・ダライラマ14世に関する両国会談が延長され、インド国内では反中国抗議活動が起こっている。両国の外交関係に暗雲が立ち込めている。
事件が明るみになったのは昨年末。インド紙ザ・ヒンドゥによると、インド在上海領事館の外交官バーラチャンドラン氏は、支払い義務を怠ったとして中国人貿易商に誘拐されたインド人貿易商2人の事件について担当しており、裁判にて2人の解放に向け事務手続きを進めていた。
同報道によるとバーラチャンドラン氏は重い糖尿病を患っている。12月31日の夕方、義烏市内の裁判所へ出廷したが、審議が5時間以上も続き、その間、常備薬の服用を禁止されていた。
法廷で、怒りの収まらない義烏現地商人がバーラチャンドラン氏や2人を襲撃し、もみ合いになった。その際、バーラチャンドラン氏は気絶し、卒倒したため、病院へ搬送された。
インド外務省はこの件を受けて2日、中国駐インド大使館の臨時代理大使である張越氏を呼び出し、抗議した。
インド紙タイムズ・オブ・インディアによると、在中国インド大使館広報担当は、バーラチャンドラン氏の健康上の影響は深刻ではないものの「多少乱暴に扱われた」と述べている。またインド在上海領事館リーヴァ・ガングリー・ダス総領事も、この乱暴な扱いがあったとの事実報告を確認しているという。
中国外務省の洪磊報道官は4日の定例記者会見で、外国領事への対応について「中国は法律・規定を遵守しており、外国領事官の身の安全を保障し、その仕事を支えている」と述べた。また両国商人の間の争議については「個別案件」とし、明確な言及を避けた。
身の危険を感じるインド人貿易商2人
インド貿易商2人のうちの1人は「身の危険を感じている」とザ・ヒンドゥ紙の電話取材に対して答えた。現在、義烏市内のホテルに身を隠しているデーパク・ラハジャ(Deepak Raheja)氏は「ホテルの門を出たら、暴徒と化した彼らが殺しにくるのではないか」と怯えている。また「私たちは早く領事館に行き、警察の保護を受けたい」とも話した。
イスラマバードから来た2人の貿易商は4カ月ほど義烏市に滞在しており、12月14日、支払いを強く要求する義烏商人らに誘拐された。ラハジャ氏の証言によると、その間、水や食べ物を与えられず、身体的な暴行を受けた。未払い金の証拠となる書類について、ラハジャ氏は「監禁され、脅迫された状況でサインした」と証言しており、書類はすべて中国語のもので、通訳もいなかったという。
2人の誘拐・暴行については31日、担当外交官であるバーラチャンドラン氏が気絶する事件が起きてから、明るみになった。
4日、インド外務省に呼び出された中国駐インド大使の張炎氏は、洪磊報道官とは異なる対応を見せた。2人の暴行事件について「問題が重要であるとし、出来るだけ早期に問題を解決する」と中国当局が事件の調査を行うことを約束した。
インドのクリシュナ外相は同日「2人の国民の安全が優先されることに両国は同意した」と発表した。
ニューデリーでは反中抗議 インド在中国は義烏から離れるよう警告
一連の事件の影響を受け、両国の外交関係には暗雲が立ち込めている。
インド首都ニューデリーでは、保守系団体が反中国スローガンを叫び、国旗を燃やすなどの過激な抗議活動が起こっている。また両国はチベット精神指導者ダライ・ラマ14世に関する協議を1カ月後に予定していたが、中国当局側の要望により延期された。
ザ・インドゥ紙が伝える情報筋によると、義烏市当局は、莫大な金額が絡み、何十人もの義烏商人の怒りにも対応しなければならない同件を煙たく感じており、この2人に長く市内に残ってほしくない様子だという。義烏商人は未払い金の支払いをインド企業側に強く要求している。伝えられるところ、このインド貿易商2人は1000万元(約1億2000万円)もの未払いを抱えている。
世界的な日用品取引の中心地とされる義烏市では、現在約100人以上のインド人が商売を行っている。事件以来、在中国インド大使館は公式サイトにて声明を発表、インド人貿易商らに対し義烏市に近づかないよう警告している。以下はその声明の一部。
「両国の商売上の問題があった場合、インド人商業者は不法に拉致され虐待される恐れがある。これまでの事実を元にすると、(もし事件が起きた際)法的手続きが有効になるかどうか保証はできない」「義烏で商売をするなら十分な警戒を。インド人商業者は義烏から離れるよう警告する」