【大紀元日本1月9日】中国広東省深セン市と北京市の政府は3日、今年はじめにそれぞれの最低賃金を引き上げると発表した。中小企業の経営者からは、資金繰りが苦しい中、この時期の引き上げは経営を圧迫し、企業倒産が一層増えるという不満の声が上がっている。
北京市は今月から、最低賃金を1160元(1元は約14円)から1260元に引き上げ、上げ幅は約8.6%。ちなみに、直近2年間の上げ幅は20%と20.8%だった。
深セン市政府は3日、2月1日から、最低賃金を15.9%を引き上げて、月額1500元に達した。ちなみに、去年の上げ幅は20%だった。
過去の2年間、全国最低賃金の平均上げ幅は22%となる。
有力紙「新京報」によると、今年の上げ幅が縮まった原因について、「中小企業の経営は不振であるため、実際の受け入れ能力には限度がある」と伝えている。
企業からは不満の声
それでも企業経営者からは、この時期での最低賃金引き上げは非常にタイミングが悪いと不満が噴出させている。
香港工業総会(FHKI)の副会長・劉展灝氏は、「この厳しい経済情勢の中で悪戦苦闘する企業が多い中、深セン当局はその事情をまったく考慮していない」と非難した。
中小企業経営者らは、欧米市場への輸出が激減しているため、賃上げは企業の経営を圧迫して大量の倒産を招く、と警告を発した。
香港中小企業連合会の劉達邦・会長も強い懸念を示した。「広東省が引き続き最低賃金を引き上げれば、倒産する香港企業がさらに増えるだろう。また現地から撤退せざるを得ない企業も多くなる」
一方、中国輸出産業は人民元値上げの影響をも受けており、過去1年間半の間、人民元対米ドルの相場は8.5%上昇した。そのため、労働力密集型の製造業はアジアの他の国、特に労働力コストが低いインドネシアとベトナムに移転され始めている。
英紙フィナンシャル・タイムズ中国語版は、中国政府が最低賃金を持続的に引き上げている理由について、社会不安を招いている貧富の格差を縮小させるほか、内需を拡大させて経済を刺激するのも狙いだと報じた。
一方、最低賃金を強行に引き上げるべきではなく、政府は経済の発展に沿って、関連の政策を絶えず調整するのが本来のやり方だ、と専門家たちが指摘した。
ある学者は、政府の急務はインフレの抑制であると指摘、「それは一般労働者層の生活を安定化させるための根本策だ。そうしないと、最低賃金をいくら引き上げても、物価の上昇で帳消しされてしまう」と分析した。
フィナンシャル・タイムズ紙の中国語サイトによると、去年11月、中国の消費者物価指数CPIが夏の6.5%から4.0%台に下げたが、多くの産業労働者は、可処分所得は増えていないと不満を漏らしている。