【大紀元日本2月6日】かつて中国の湿地面積は6600万ヘクタールを誇り、数も豊富で様々なタイプがみられた。しかし土地利用などの人為的な破壊により、湿地の面積は急速に縮小していった。開発がもたらしたこの空前の生態への災難はどうしたら阻止できるのか。専門家は憂慮している。
湿地の存在は生命にとって非常に重要だ。湿地と森林、海洋は地球の三大生態系と呼ばれ、生物の多様性を育み「地球の腎臓」と讃えられる。新陳代謝は自然の摂理で、生態系が破壊を受ければ必ず人類に災いが及ぶ。そこで、97年に2月2日を「世界湿地の日」に定めた。第16回を迎えた「世界湿地の日」の今年のテーマは「湿原と旅」だった。
全ての生態系のなかで、湿地は人類の経済開発をもっとも受けやすい。湿地の消失と湿地の生態系の衰退は覆しがたい生態の災難をもたらすだろう。
空前の破壊を受ける中国の湿地
中国はかつて6600万ヘクタール以上の湿地面積を有し、世界の湿地面積の10%を占め、アジアで第1位、世界第4位を誇っていた。現在は、不合理な利用や破壊により湿地面積は急激に縮小している。1990年代半ばまでには海岸の砂浜の50%、1000カ所近い天然湖、黒竜江省三江平原では78%の天然湿地が消失し、7大水系の63.1%が汚染により飲用水として利用できなくなったという。
92年、中国はラムサール条約に加入した。また同事務局も成立し湿地保護の規定や活動を推進しているものの、その効果は見られず依然として急激な湿地面積の減少は続いている。
都市区域の拡大により、多くの都市に存在した湿地は居住区へと変わった。現在、水に関係する名称は北京の「北洼(わ)路」、「葦子坑」、「海淀区」など地名に残っているだけだ。
1960年から80年代、広州市の海岸に存在した大量のマングローブは1990年代になると植林したものを含めても3800ヘクタールにまで減少し、82%のマングローブは消えた。
2003年に行われた長江水域の湖への調査により、長江の中下流地区の湿地面積は急激な萎縮傾向にあり、もともと100以上存在した湖は洞庭湖、鄱陽湖、石臼湖の3つに減り、長江と湖の生態系は大きなダメージを受け、洪水防止、貯水力は明らかに低下してしまった。
もっとも有名な洞庭湖、鄱陽湖の湿地は季節性になり、近年は何度も完全に干上がった状態になった。霧にかすむ広々とした水面、遥か遠方の船影などの景色はもはや見ることは出来ず、湖底は果てしない草原に変わり、湿地の生態や種の破壊は回復し難い。
中国全土で続いている多くの開墾や不合理な湿地開発、湿地の水資源への過剰な利用や汚染物質排出などが湿地を退化、喪失させた。湿地の野生生物資源へのの略奪的な開発利用は生物多様性の衰退を加速させた。また、湿地上流の水土流出、堆積が湿地の防洪水、貯水機能を失わせ、大型のダムにより水がせき止められたことなどが湿地の急激な退化の原因である。
どのように開発による生態破壊を食い止めるのか
現在、唯一成功しているのは杭州市の西渓湿地の回復である。中華文明のゆりかごである西渓湿地は90年代都市化の加速に伴い汚染されていった。だが2003年から3度、100億元以上の保護経費でもて2010年にはおおよそ回復した。しかしながら巨額を費やした湿原回復のサンプルを一体どのように多くの生態破壊を受けた湿地に対し広めていくのだろうか。
ここ数年、中国では『湿地保護条例』、『生態補償条例』、湿地保護が盛り込まれた『国家「十二五」計画概要』、『全国生態建設および保護計画』、『全国湿地保護「十二五」実施計画』、『湿地保護補助資金管理暫定方法』など湿地に対する保護措置や条例が出てきている。
だが関連の専門家は、これらの成果は湿地が直面している災難を食い止めるには足りていないと考えている。
成都観鳥会の沈会長は、現在大陸の湿地生態環境の悪化傾向は根本的には緩和されておらず、一部の地域の状況は保護前よりもひどくなっていると指摘。これらの主な要因は湿地に対する研究が不足していることや、最も基本的なデータベースさえ非常に不足していることだという。