【大紀元日本5月4日】中国商務部は4月17日、3月の対中直接投資(FDI)が前年同期比で6.1%減の117億6000万ドルと発表した。これにより、対中直接投資は昨年11月から5カ月連続で減少。また、今年第1四半期(1~3月期)の対中直接投資は、前年同期比で2.8%減の294億8000万ドルとなった。
対中投資減少 真の要因は何か
中国商務部は、対中直接投資が減少した主な要因として、世界経済の低迷や欧州債務危機、および国内不動産市場に対する抑制策の影響を挙げている。
一方、米サウスカロライナ大学の謝田教授は、「中国は過去30年間において、主に労働力の安さと外資企業への優遇政策により海外からの投資を誘致してきたが、近年この二つの状況が大きく変化している」と指摘する。
労働力コストについては、2010年以降、台湾系、日系を中心とした外資企業で賃上げストライキが多発している。この賃上げストライキにより、一部の企業は最低賃金を20%~30%引き上げるなどのコストアップを迫られた。
また、中国政府は海外からの直接投資を誘致するために、外資企業に対して特に税制上の優遇措置、いわゆる「2免3減」政策(外資企業所得税につき、最初の黒字となった事業年度から2年間を免税とし、その後の3年間は税率を半減する)をとってきた。
しかし2008年1月1日から、外資企業への税制優遇政策を廃止。外資企業と国内企業に対して、一律に企業所得税を25%にすることを実施した。労働者の賃上げに加えて課税率のアップは、外資企業への負担が一気に増加したと言えるだろう。
謝教授はまた、近年の土地価格の高騰や深刻な環境汚染問題も対中直接投資に影響しているとして、次のように述べた。
「企業は今後、環境汚染の改善にも巨額の資金を注ぎ込まないといけないため、土地コストが一層かかることになる。海外からの投資が減少したのは当然の結果だ」
投資誘致に「厳しい」中国の現実
中国商務部は、今年の対中直接投資に関する見通しについて、年間を通じて「厳しい」との見解を示している。17日の記者会見において、商務部報道官の沈丹陽氏は、「今後、外国企業の中部・西部地域への投資を強化するよう導き、また戦略的新興産業などへの外資企業の投資を奨励していきたい」と述べた。
しかし、広東省政府のある経済担当官員は、ラジオ・フリー・アジアの取材に応えて、次のように述べた。
「戦略的新興産業や創造産業への投資誘致について、中国は人材や政策環境において強い吸引力を備えていない。例えば、知的財産権の保護等に関して、多くの外資企業は、中国国内の民間企業にだけではなく、現地の政府にも企業機密を盗まれないよう警戒しなければならないのだ」
対外投資は倍増 背景に「高官の資金持ち出し」
一方、今年第1四半期における中国の対外投資額は、17日商務部の発表によると、前期比で94.5%増の165億ドルに達した。
対外投資額が短期間にほぼ倍増したことについて、謝教授は次のように述べる。
「長い間、中国には巨額な貿易黒字が続いてきたため、対外直接投資の増加は必然的なことだ。しかし、今回の数値が前期に比べて約2倍に増えたことについては、中国の高官が巨額の資金を海外に持ち出している実態を反映したとも考えられる」
謝教授によると、中国高官による資金の海外持ち出しは、現在の中国の不安定な経済状況と関係があるという。その上で同教授は、「この2年間において、中国の国際収支のうち、資本収支と経常収支の黒字額が共に減少している。これは中国経済の動向が下振れに変化していることを示唆したものだ。この動向が続けば、人民元は下落基調に向かうだろう」との見解を示した。
昨年6月14日、中国人民銀行(中央銀行)は同ウェブサイドで、汚職高官による資金持ち出しの手口や逃亡先をまとめた報告書『中国腐敗分子によると海外への資産移転ルートおよびその観測方法に関する研究』を発表した。
同報告書によると、1990年代から2008年までに、約1万6000~1万8000人の中国高官が海外に逃亡。持ち出し資金は8000億元に達するという。資金の持ち出し手口の一つとして、不正な海外投資が挙げられている。