ギリシャのユーロ圏離脱は、中国の年間経済成長率を6.4%に低下させると専門家が指摘(ho)
【大紀元日本6月5日】中国大手投資銀行の中国国際金融有限公司(中金公司、CICC)のチーフエコノミスト・彭文生氏はこのほど、ギリシャがユーロ圏を離脱した場合、「ユーロ圏にとって最大の貿易相手である中国の経済は深刻な打撃を受け、年間経済成長率が6.4%に低下する恐れがある」との見解を示した。中国政府は今年3月の全国人民代表大会(全人代)において、2012年国内総生産(GDP)の成長率目標を、昨年までの「8%前後」から7.5%に引き下げている。彭氏の見解は、下方修正したこの目標の達成さえ困難になる可能性を示唆したものと言える。5月22日付の中国メディア「財新網」が報じた。
欧州向け輸出、著しく鈍化
近年、中国と欧州連合(EU)との2国間貿易総額は急増しており、EUは中国の最大の貿易相手となっている。中国の税関総署や商務部の統計によると、昨年の中国とEUとの2国間貿易総額は5672億1000万ドルに上り、同年中国の輸出入総額の15.57%を占めた。またEUは中国にとって最大の輸出先であり、昨年の年間輸出総額の18.8%を占めている。一方、中国の第2の貿易相手である米国との2国間貿易総額は、昨年は4400億ドルであった。
しかし今年に入ってから、欧州向け輸出の鈍化が顕著になった。中国商務部が4月27日に発表した『中国対外貿易情勢報告(2012年春)』によると、今年第1四半期(1~3月期)における欧州向け輸出はマイナス成長となっている。同報告書によると、昨年第1四半期から第3四半期(1~9月期)までの欧州向け輸出伸び率は18.2%であったのに対して、第4四半期(10~12月期)の伸び率は6.5%に急落。さらに、今年第1四半期の対欧州輸出は前年同期比で1.8%減となった。第1四半期の貿易統計をみると、前年同期比での貿易総額の伸び率は7.3%にとどまり、中国政府が制定した目標である10%を大幅に下回った。
税関総署が5月10日に発表した4月貿易統計では、欧州債務危機の影響により欧州向けの輸出は不振が続き、前年同月比で2.4%減となったという。同月の米国向け輸出は同10%増で、日本向け輸出は同5.4%増だった。
このような状況から中金公司の彭文生氏は、ギリシャがユーロ圏を離脱すれば、欧州の経済情勢がさらに悪化する恐れがあり、今年の中国の輸出全体の伸び率は4%に急落し、経済成長率は6.4%まで押し下げられると予測をする。
ギリシャをめぐる「2つのリスク」
彭氏はまた、ギリシャがユーロ圏を離脱した場合、中国政府が2012年国内総生産(GDP)の成長率目標である7.5%を達成するには、6000億元(約7兆4400億円)相当の大規模な景気刺激策が必要になるとの認識を示した。
そうなると、今年の年間固定資産投資規模は35兆6000億元から36兆2000億元に増やさなければならないため、2012年金融機関の新規貸出総額も約5000億元増えて9兆元に達すると同氏はいう。
元中国人民銀行通貨政策委員の余永定氏は、5月30日付「中国証券報」に評論を寄せ、中国の金融当局に対して、ギリシャがユーロ圏から離脱すれば、ギリシャ国債を多数持つ欧米諸国の金融機関をはじめ世界の金融市場が大混乱に陥る恐れがあり、また、その影響で中国国内の金融市場も大打撃を受けることになるため、早急に対策を講じるよう提案した。
また余氏は、その場合、金融市場ばかりでなく、中国国内の輸出産業も深刻な影響を受けて大量の労働者が失業することが予想されるとの見方も示している。
中国国営の新華社も5月21日の社説において、ギリシャのユーロ圏離脱リスクと債務不履行(デフォルト)リスクが高まっているため、欧州諸国と貿易する中国国内の企業は早急にその対応措置を講じるべきだと警告した。
5月中旬、財政緊縮反対派の急進左派連合(SYPIZA)と緊縮支持派の新民主主義党(ND)などの党派による連立協議が失敗したことで、6月17日、ギリシャは再選挙を行う予定。
同選挙で急進左派連合が勝利すれば、ギリシャ国内の財政緊縮政策が中止され、国際社会からの救済プログラムがストップすることにより、デフォルトに陥る公算が高まるとみられる。