【大紀元日本6月26日】小売売上高、固定資本投資や鉱工業生産などを含む5月中国経済指標が低迷していることに対して、中国の住宅市場は意外にも回復傾向になっている。国内報道によると、5月、北京、深センなどの大都市の住宅契約件数は前月比で30%~50%増加しており、一部の地域の契約件数は政府が不動産価格抑制政策を実施した前の水準に回復しているという。また、南京市などでは多くの市民が住宅購入に殺到する場面もあった。この影響で、住宅価格も上昇の兆候が現れた。しかし、住宅価格上昇傾向の背後には、共産党政権最高指導部の権力闘争が関わっているとみられる。
一部都市では住宅契約件数が増加
中国住宅市場のバロメーターとされる北京市の住宅市場に関して、北京市住宅建設委員会がこのほど発表した統計によると、5月、同市のインターネット上の新規住宅契約総件数は1万502軒で、前月比で34.2%増、前年同月比では43%増となった。また、同委員会は6月1日~9日の9日間に、北京市の新規住宅契約件数は2396軒に達し、前月同期比で14%増加したほかに、この9日間において中古住宅契約件数は3262軒に達し、前月同期比で22.4%増となったと発表した。北京市住宅建設委員会は6月の住宅契約件数は5月と比べてさらに増えると見込んでいる。
北京市統計局によると、5月、同市の住宅販売総面積は109.5万平方メートルに達し、前月比107.8%増で、前年同期比で29.6%増となった。このため、同市の一部地区での住宅価格は上昇したという。
6月10日(日曜日)、南京市や深セン市では住宅物件を購入するために、多くの市民が押し寄せて長蛇の列を作る事態になった。住宅開発会社の碧桂園集団が10日、江蘇省南京市内にある「碧桂園鳳凰城」分譲マンション物件700戸を、1平方メートル当たり5580元と割安な価格で供給するとの情報を聞き入れた市民1万人余りが当日「鳳凰城」に殺到した。報道によると、10点xun_齠冾ナ同分譲マンションは600戸以上の物件が販売済となり、売上高は3億5千万円に達した。
一方、10日、広東省深セン市でも住宅開発会社が供給する分譲マンション物件1千戸に市民が押し寄せて長蛇の列を作った。同物件の販売価格は1平方メートル当たり1万6千元~2万5千元と設定されており、平均販売価格は1平方メートル当たり2万1千元。当点xun_齠冾ナ約820戸が販売され、売上高は16億元に達したという。
さらに、鏈家不動産市場調査研究部の統計によると、不動産大手万科集団をはじめとする15の不動産企業がこのほど発表した5月の営業状況報告からみると、この15の不動産企業は5月の売上総額が762億2千万元に達し、前月比で22.55%増加したという。また1~5月までの15の不動産企業の売上総額は2686億元で、前年同期比で7.15%増加した。
国家統計局が6月18日に発表した5月の70大中都市住宅価格変動情勢によると、4月と比べて、新規住宅価格が上昇した都市の数は前月の3都市から6都市に増えた。70大中都市のうち、43都市の新規住宅価格は前月比で下落したが、しかし、その下落幅は縮小傾向にあり、平均下落幅は0.13%。また、中古住宅市場でも価格の上昇がみられている。70大中都市のうちの18都市は5月の中古住宅価格が前月比で上昇したという。
住宅価格が上昇傾向
北京中原市場研究部の張大偉氏は「北京商報」の取材に対して、「不動産価格抑制政策の影響がまだ続いているが、しかし最近、契約件数の増加など不動産市場の動きをみると、明らかに価格はすでに底値をついて反発しようとしている」と今後住宅価格が上昇傾向にあるとの認識を示した。
また6月18日付「北京商報」によると、中国の首都経貿大学と中国社会科学院が大連や青島など全国35都市の住民を対象に共同で行った住宅価格調査では、32都市の住民は今後住宅価格が上昇するとの予想を示した。
その理由として、現在北京、上海、杭州など約40の地方政府が相次いで、住宅購入補助金給付や住宅購入に関する税金優遇、一般住宅の認定基準の緩和などを含む不動産価格抑制政策の微調整を行ったことが挙げられている。また、このほど中国人民銀行が3年ぶりに、金融機関の貸出基準金利と預金基準金を0.25%引き下げたことも、住宅価格の上昇につながるとみられる。
中国指導部の権力闘争も一因
5月、多くの都市で住宅市場が急速に回復していることについて、一部地方政府の不動産抑制政策の微調整に関係するほか、専門家は中国指導部の権力闘争も一因となっていると指摘する。
米国在住の中国問題専門家の石蔵山氏は「中国において、経済と政治の関係は密接不可分である。現在一部の都市では住宅市場の回復が見られたのは、温家宝首相が主導する不動産価格抑制政策が難しい局面に直面していることを示した。中国経済は今後より複雑な局面を迎えるだろう」との見解を示した。
中国の温家宝首相は5月1日(メーデー)に北京市にある住宅建設現場を視察した際に、政府の不動産価格高騰を抑える決心は揺るがないと強調した。また、同月20日に武漢市で開催された「6つの省の経済情勢座談会」において、温氏は不動産価格抑制政策を継続する必要性を訴え、「不動産価格抑制政策を後退後退させてはならない。さもなければ、長年にわたる努力は台無しになる恐れがある」と述べた。さらに、23日に開催された国務院(内閣にあたる)常務会議においても、温氏は再び「不動産価格抑制政策を安定にかつ厳しく実施していく必要がある」と再三に強調した。
しかし、3月重慶市共産党委員会書記の薄熙来失脚事件以降、勢力が弱まりつつある薄氏の最大支援者で共産党最高指導部の中央政治局常務委員の周永康氏は政敵である温家宝氏をけん制するために、中国経済を撹乱しようとの計画を企んでいた。周氏をはじめとする「江沢民派」は経済の混乱、社会の混乱が起きる隙に、勢力を蓄え、さらに増強させることで、再び温家宝氏や胡錦濤氏に反撃する機会を伺っている。
北京中原不動産の統計によると、薄熙来失脚のきっかけとも言える薄氏の部下である王立軍の米国大使館逃げ込み事件が発生した2月末までに、全国で不動産価格抑制政策を微調整した地方政府は17都市しかなかった。
米国在住の中国経済専門家の程暁農氏は中国の住宅価格はすでに極めて高水準にあるため、今後住宅価格が上昇し続けると、もしある日突如バブルがはじければ、中国経済は急速に崩壊へ向かうだろうとの懸念を示した。