抗議現場の一角(ネット写真)
【大紀元日本7月5日】四川省什邡市で起きた、化学工場の建設をめぐる住民2万人による抗議活動の行方が注目されている。抗議活動の拡大を受け、当局は工場の建設中止を発表し、逮捕した住民の大半を釈放するなど譲歩を見せている。共産党機関紙「人民日報」傘下の「環球時報」は異例ともいえる地元当局の対応を非難している。またインターネットでは抗議活動に関する書き込みは自由にできる状態となっている。海外メディアは「市民の力を見せつけた勝利」と評し、背後に深刻な環境汚染が政局不安を引き起こしかねないという当局の懸念があると分析した。
亜鉛精錬大手の四川宏達グループが6月29日、同市内で産業用途として貴重な金属モリブデンなどの精錬工場の建設を始めたのが事件の発端。7月1日夜、建設に反対する住民約1万人が抗議デモを起こし、翌日には2万人に膨れ上がった。
地面に倒れた14歳の少女は亡くなったという(ネット写真)
デモの鎮圧に当たった警官隊は催涙弾や手榴弾を放ち、女性、子どもを含む多数に負傷者が出ており、死亡者の情報も伝えられている。その様子はインターネットで公開され、大手情報サイト「新浪ネット」のミニ・ブログでは300万件以上の書き込みがあり、市民からの高い関心を呼んでいる。インターネットの監視体制が徹底している中国では、同様の書き込みは通常ならば即座に削除されるが、今回はこれらの書き込みが可能で、閲覧できる状態となっている。
地元当局は当初、強硬手段で抗議活動の沈静化を図ろうと警官を投じた。また公式ウェブサイトで「わが党の結成記念日に合わせて、下心のある者が真相を知らない市民や学生を利用し、抗議活動を起こした」「背後に海外の敵対勢力である法輪功とダライラマ14世の力がある」と根も葉もない批判を繰り返した。
負傷した民衆(ネット写真
しかし事態は収まることなく、近隣の市から市民が応援に駆けつけるなど拡大する一方だ。これを受け、地元当局は逮捕したデモ参加者の大半を釈放し、批判記事も削除した。当初の「工場建設の一時停止」から一転して「建設の中止」と住民側の主張を受け入れた。
「環球時報」は地元政府のこの一連の対応について、「市民の政府に対する不信をさらに深めた」「何度も同じ過ちをたどっている。これが最後だと信じたい」と異例とも言える批判記事を掲載した。
抗議者を追っかけて暴行する警察(ネット写真)
同記事はさらに、環境汚染問題に関して「決して市民に実情を隠すべきではない」と強調し、「世論をコントロールする発想を捨てよ」とこれまでの対応を転換するよう促した。
英紙インディペンデントは4日付の記事で、中国で環境問題が深刻化しており、ますます多くの中産階級が健康被害を憂慮して抗議を加えていると指摘した。さらに「中国の経済発展は重度の環境汚染をもたらしている。この問題は社会の安定を脅かす重要な一因となっている」と分析、「市民の力を見せつけた勝利だ」と報じた。