【大紀元日本7月11日】中国天津市近郊の薊県にある大型ショッピングセンターで6月30日に起きた火災について、当局の発表した死者数とネットメディアが調査した数と大きくかけ離れている。火災直後、当局は死亡者10人と発表したが、ネットメディアは情報筋の話として、378人以上の死亡と伝えている。さらに、天津市トップの張高麗市党委書記から緘口令が出され、地元メディアは一様に沈黙を保っている。
火災発生日同夜、国営新華社通信は死者10人、負傷者16人と報じた。10人の死者のうち、9人が従業員で、1人が女性客だという。
一方、市民から提供された死者リストは100人以上に達している。ネットメディア「中国記者調査網」は情報筋の話として、少なくとも378人が死亡、多数の女性と子どもが含まれていると伝えた。火災当時はちょうど週末で、ショッピングセンターでイベントが開催され、多くの子供連れ女性客が来店していた。しかし、政府発表の死者数には顧客は1人しかなく、子供は1人もいない。
これだけ大きな火災にもかかわらず、天津市の政府メディア「天津日報」を含む地元紙5社は火災直後、いずれも火災について報じなかった。4日になり、ようやく1社が170文字の短い記事を掲載し、内容は新華社の配信記事と同じだという。
天津メディアの異常な対応に「ニュースのない町」、「良知を失ったメディア」、「死者10人だとしても、170文字はないだろう」と批判の声が殺到している。中国青年報の曹林記者は自身のミニブログで「異様に情報が封鎖されている都市。厳しい管制でメディアもジャーナリストも育たなかった」とつぶやいた。また、「他市の住民は高い関心を持っているのに、天津市民の声は全く聞こえていない」と不思議がっているネット利用者もいる。
ある政府関係者は、市トップの張高麗市党委書記から箝口令が出され、死者についての言及を禁じられ、「大局を重んじ、安定を重視せよ」を強調していると証言した。さらに、現地で取材を行った「人民日報」の記者を監視するなど、厳しい情報封鎖体制が敷かれた。火災のあった薊県当局は報道機関の取材と調査を拒否し、政府が作成した原稿を使用するようメディアに要求している。
当局は、遺族に約60万元(約750万円)の「口止め料」を与え、実情を話した人を逮捕するなどしている。
7月6日午後、火災で亡くなった人のための追悼式は警官の監視下に行われ、火災に言及したため、逮捕者が出ているもよう。同日午後、薊県のインターネットが切断され、国内外記者は薊県入りを禁止されている。
市の一連の情報封鎖は、張高麗市党委書記が今秋の第18回党大会で最高指導部入りを果たすと取りざたされていることと関連しているとの見方がある。この肝心な時期に何としても平穏にやり過ごしたいのは同書記の本音だろうが、市民から謝罪と市指導部の更迭を求める声も高まっている。