1億元の不正が発覚したきっかけとなる写真。事故現場で微笑む楊達才局長(ネット写真)
【大紀元日本9月13日】「あの時、何で笑ったんだろう」。中国陝西省安全監督局の楊達才局長は今、きっと深く後悔している。
8月26日に同省延安市付近で重大な交通事故が発生し、事故現場に駆けつけたある幹部の微笑む姿が撮られ、インターネットに掲載された。36人の市民が命を落とした直後の場所で笑みを見せた無慈悲な幹部にネット利用者は怒りを爆発させ、「こいつは誰だ」と執念の「人肉捜索」(ネットユーザーがネット上で情報をつのって個人情報を特定すること)を開始した。
人物の特定はいとも簡単にできた。同省安全監督局の楊達才局長(54)がすぐ「捜索線上」に浮上し、確認された。楊局長はのちに微笑み局長と名付けられた。
微笑みへの批判について、同局長は「現場の重苦しい雰囲気を和らげるだめだ」と釈明した。
ネット利用者らの本領発揮はここからだった。同局長が高級時計を身につけていると、公開された写真からあるネット利用者が気づいた。ネットで大捜索が始まり、同局長に関する写真が掘り出され、これまでに5個の時計を使っていたことが判明した。ロレックス、オメガ、ブルガリ、モンブラン、ロンジン・・・どれも月給が高くても9千元(約11万円)の局長には簡単に買えない品々ばかり。汚職疑惑を指摘する声に対し、同局長は「ここ10年間、確かに5個の時計を買った。いずれも自分の収入で買ったもの。息子も時計好きで、交互に使用している」とあっさり認めた。
侮れないのがネット利用者の執念。さらに調査を続けた結果、同局長が、ほかにも6個の高級時計を所有していたことが判明した。いとこを意味する中国語、「表哥」の「表」は時計の意味でもあることから、「表哥」(時計兄貴)と同局長は新しいあだ名を付けられた。
騒ぎはついにネットから一般メディアに拡大した。北京晩報は「微笑み局長は個人財産を公開すべきだ」との記事を掲載し、自ら説明責任を果たすべきだと追究した。地方紙・銭江晩報は「楊局長、ブランド時計店を経営か」を題とする記事で、ネット批判にタジタジの局長を皮肉った。
騒ぎはここでも終わらなかった。共産党機関紙人民日報のニュースサイト人民網によると、時計のほか、楊局長は高価な宝石で作られた腕輪、ブランド品のベルトと眼鏡を使用しており、いわば「全身宝物だらけ」だという。
ネットの力はとうとう幹部の不正を調査する紀律検査委員会を動かす事態となった。香港紙・蘋果日報の先日の報道によると、局長の自宅から現金800万元(約1億円)、7000万元(約8.6億円)相当の重要文化財、各種高級時計23個が押収され、さらに職権を利用して2300万元(約2.8億円)を収賄、総額1億元(約12億円)に上る不正が発覚した。同局長は現在、当局から取り調べを受けているという。