事故のインタビューを仕切る中聯弁の王剛副主任、左は梁振英長官(ネット写真)
【大紀元日本10月4日】香港・ラマ島沖で1日の夜、フェリーと衝突した船が沈没。事故の死亡者は38人に達した。事故発生後、中央政府から救助船が派遣され、救助活動に備えたと報じられた。しかし、救助船の派遣は香港政府の要請によるものでなければ、内政干渉にあたるのではないかと問題視される事態となった。一方、大陸メディアは「95人を救助した」と虚偽の報道を行った。
子供を含む38人の遭難で香港全島は悲しみに包まれた。梁振英長官は2日午後、4日からの三日間を同事故の追悼日とし、各政府部門の庁舎で半旗を掲げると発表した。香港政府は船員ら7人を逮捕し、事故原因について調査中としている。
一方、2日早朝、中国交通省南海救助局が広東省政府からの指示を受け、救助船4隻と救助チームを事故現場に派遣したと報じられた。梁長官もその後の記者会見で、中央政府からの救助船が事故現場に到着したと認め、香港政府から要請したかどうかについて触れず、「人命救助にすべての力を結集させる必要がある」と述べることに留まった。
英BBC放送は香港の救助船のほうが広東省から来る救助局の船よりも早く現場に到着するため、わざわざ救助船を派遣する必要がないと指摘した。梁長官も当局からの救助船がその後、出番がないため、香港水域から離れたと述べた。香港市民から、救援船の派遣は中央政府による演出ではないかと疑問視する声が上がっている。
しかし、新華社と並ぶ国営通信社の中新社は2日、「香港当局の要請を受け救助船を派遣した」と報じ、さらに「事故現場付近ですでに95人を救助した」と救命胴衣を着用し、望遠鏡で海を見る救助隊の写真付き記事をウェブサイトに掲載した。だが、派遣された救助船は事故に遭った船を引き上げるためのもので、人命救助用のものではないと香港メディアは伝えた。
同記事はまもなく取り下げられた。
また、負傷者が搬送された病院で行われたテレビ局の取材で、香港に駐在する中央政府の代表部である中聯弁の王剛副主任はインタビューを仕切り、「梁長官は完全に無視された」との場面があった。この場面がテレビで放送されると、部下のように黙って王副主任のそばに立つ長官の姿を市民らは「いったい誰が香港の長官なのか」「あたかも(王副主任の)秘書のようだ」と皮肉った。
香港では9月、中国共産党の一党独裁体制を賛美する内容を含んだ「国民教育」の実施に反対する大規模なデモが発生したばかりで、市民らの中央政府への不満が根強い。梁長官はこれまで中央政府に近い立場を取ってきたため、「隠れた共産党員」と呼ばれている。事故の救助活動をめぐって、市民らの中央政府への不信感が浮き彫りにされた形となった。