今年3月、感極まった顔の薄煕来氏(Getty Images)
【大紀元日本10月4日】前重慶市トップ薄煕来氏が党籍剥奪と公職追放され、収賄容疑などで身柄を司法機関に送られることについて、ニューヨーク在住の中国問題専門家、ジャーナリストの何清連氏※は、一連の処理は共産党の権力闘争の一幕に過ぎず、共産党体制の腐敗問題や、今後の政治の方向性が変わることはまずない、との見方を示した。さらに、指導部が発表した同氏の三つの主な容疑はその政治生命を断ち切るためであり、その命を取るつもりがないと分析した。
3つの容疑となる職権の濫用、収賄(一部情報では2千万元)、多くの女性との不適切な性的関係について、何氏は当局の対応の裏を分析した。以下はその抄訳。
薄煕来の収賄金額はわずか2千万元(約2.4億円)。私が思うには、指導部が再三に検討した上で決めた数値であろう。その目的は、高官の汚職問題への反発感情を最小限に抑えるためだ。実際の収賄金額ははるかに大きいはず。近年、数億元、数十億元の汚職幹部らも、執行猶予付きの死刑や、無期懲役、あるいは有期懲役しか受けていない。その数値から読み取れるのは、薄煕来も死刑を受けることはないはず。
三つの容疑の中で最も絶妙なのは「多くの女性と不適切な性的関係を保った」。これはまさに、自国民の心理を熟知する指導部の「賢い決定」である。その狙いは、本案件の政治色を払拭し、数カ月間続いた国民の高い関心を女性問題に転換させるためだ。確かに指導部の願いは叶った。ここ数日間、ネット上では、薄案件の関連情報の9割強は、秘密の愛人名簿を憶測する内容だった。
多くの人たちは薄の刑期を推測し始めている。しかしそれは無意味なことだと思う。なぜならば、薄案件の真の起因はこの三つの容疑ではなく、掟破りの政治活動で政治局常務委員の座を狙ったことにあるからだ。
この真の起因が言及されないことから、指導部の目的は薄の政治生命を終結させたいものの、彼の命を取るつもりはない。胡錦濤主席のこの策について、多くの海外在住の中国問題専門家は「放虎帰山」(せっかく捕まえた虎を山に返してしまっては今後が思いやられる)だと危惧し、主席に薄の冷血無情さを忘れないようにと進言している。
次期指導部の人事を決定する党の第18回代表大会。薄煕来は権力体制から追放されたものの、習近平の2週間近い「失踪」や、軍と政法(公安・司法)委が操った反日デモの実態はまだ闇の中。最高指導部となる中央政治局常務委員会の9人の委員は立て続けに2回の公開行事に揃って参加し、「指導部の団結」をアピールしてきたものの、指導部の権力闘争がこれで終幕することはない。
※何清連氏
ニューヨーク在住の中国人経済学者、ジャーナリスト。女性、中国湖南省生まれで55歳。混迷を深める現代中国の動向を語るうえで欠かすことのできないキーパーソンのひとりである。中国では大学教師や、深セン市共産党委員会の幹部、メディア記者などを務めていた。中国当局の問題点を鋭く指摘する言論を貫き、知識人層から圧倒的な支持を得たが、常に諜報機関による常時の監視、尾行、家宅侵入などを受けていたため、2001年に中国を脱出し、米国に渡った。1998年に出版した著書『現代化的陥穽』は、政治経済学の視点から中国社会の構造的病弊と腐敗の根源を探る一冊。邦題は『中国現代化の落とし穴』。