(The Wolf/Flickr)
【大紀元日本10月8日】7月以降、中国各地の地方政府が投資促進で「穏増長」(安定な経済成長)を狙い、相次いで景気刺激計画を打ち出す中、9月24日、四川省政府が新たに投資総額3兆6700億元(約45兆円)の投資計画を発表した。同投資計画には重要インフラ整備や産業振興、環境保護など2242項目があり、投資期間は2年間。投資規模は昨年四川省の域内総生産(GDP)の1.75倍に相当する。
現在、景気刺激計画を発表した省・市政府は11に上っており、投資総額はすでに20兆元(約250兆円)に達し、2008年中央政府が打ち出した「4兆元景気刺激策」の5倍となっている。2008年当時、中央政府は4兆元のうちの約3割を出資したが、今回の地方版景気刺激策では中央政府からの出資は全くない。
9月13日に寧夏回族自治区銀川市で開催された「中国・アラブ諸国経済貿易フォーラム」において、中国財政部財政科学研究所の贾康・所長は、このほど中国発展改革委員会(発改委)は多くの地方政府の投資計画を承認したが、今回中央政府はこれらの地方政府に財政上の支援をしない方針で、地方政府自身で融資ルートを確保しなければならないと述べた。また、贾所長は景気の下振れリスクが高まっている今、地方政府が相次いで投資計画を打ち出したのに伴い、地方政府の負債急増を警戒しなければならないとし、今年上半期国内総生産(GDP)成長率が7.8%となっているため、地方政府債務残高の増長率を7%以下に抑えなければならないと警告した。
それにより、投資資金の多くは今まで通りに地方政府系融資プラットフォームや地方政府債券の発行、銀行からの融資でまかなうとみられるが、債務の急増を防ぐため、今回の地方版景気刺激策では、地方政府は民営企業による民間資本の参入を依存しなければならない。四川省政府も今回の投資計画に関して、民営企業の参入を積極的に誘致している。しかし、国内景気が大幅に停滞している中、多くの民営企業がリスクを冒してまで地方政府の投資計画に参入したくないのが本音だという。
10月4日付国内紙「中国経営報」によると、四川省発展改革委員会の唐利民・主任は、9月24日の同投資計画発表記者会見において、「投資は依然として、現下または今後ある期間における四川省の発展を加速させる主要なけん引力だ」と述べた上で、「われわれは『非禁即入』(法律や規制で民営企業が参入してはいけないと明確に定めていない産業・領域への民営企業の参入を支持すること)の原則を堅持し、公表したすべての投資項目に関して民営企業の参入を歓迎し、しかも奨励している。また省政府は民営企業に対し、投資に関するサービスや指導を行っていく」と述べた。また唐主任は(省政府は)民営企業が積極的に、電力、電信、医療、社会福祉事業、交通運輸、文化などの産業への参入を望み、省内経済の安定かつ速い成長においてより大きな力を発揮してほしいと示した。
四川省政府と同様に、このほど陝西省、広東省、浙江省や湖北省武漢市などの省・市政府は、積極的に民営企業が同地域での投資プロジェクトに参入するようにと誘致している。例えば、9月26日に陝西省政府が開催した「民営企業の陝西省への進出を推進する大会」において、北京の民営企業で不動産投資大手の万通投資控股股份有限公司をはじめとする600社の民営企業と同省政府は、投資総額5604億元(約7兆円)、646項目の投資プロジェクトに関する合意に署名した。
しかし一方で、多くの民営企業が地方政府の積極的な誘致に慎重な姿勢を示している。陝西省のある企業経営者は、「中国経営報」の取材に対して「企業として最も重視しているのはリターンと収益だ。現在は中国経済環境が良くないので、大多数の民営企業は今いる業界で確実に、しかも地道にやっていきたいと思っている。だから、地方政府が推進している多くの投資プロジェクトには資金があっても、軽々しく参加しようとしない」と話した。また、同経営者は現在中央政府も民間資本に対し、多くの産業に進出させようとこれまでの政策を見直して奨励しているが、金融、エネルギー、鉄道または電信など国有大手企業が寡占している業界に進出しようと思っても困難だと示し、「民営企業として政府に最も望んでいるのは、民営企業が今まで進出できなかった業界への進出に関する法律法制の制定とその完全化で、国営企業と同様な優遇政策、または公平な競争環境が必要だ。2009年に山西省で起きたいくつかの民営石炭鉱が次々と国有化されたようなことを避けたい」と述べた。
中国民営経済研究会の保育鈞氏によると、現在中国民営企業の数は7000万社に上り、登記資本金総額は28兆元(約350兆円)に達しており、投資に費やされる中国民間の富は約60兆元(約750兆円)あるという。保氏は、「民営企業は投資を行う実力がある」と言う。「しかし、地方政府の打ち出した投資計画に、民営企業が積極的に参加しなければ、その大規模な景気刺激策は最終的に実行されず、計画のままで終わるだろう。より多くの民営企業を参加させるには、まず政府の政策に対する民営企業の不安や懸念を取り除かなければならない」と指摘した。
さらに、地方政府が相次いで大規模な景気刺激策を打ち出すことについて、一部の専門家は、地方政府が財政不足のためにすべての投資計画を実行するのは非現実的だと示した。
「中国経営報」によると、四川省社会科学院経済研究所の郭正模・所長は、「省政府は一つの投資計画を発表しただけだ。この計画が2013年までにすべてが実行されると思わないし、非現実的だ。この3兆6700億元(約45兆円)規模の投資に関して消費者の需要がなければ、かえって鉄鋼やセメントなどの産業の生産過剰問題を深刻化させることになる。地方政府の財政圧力が強まっているため、四川省政府が期間中に投資計画の半分、あるいは3分の1の規模を成し遂げれば、もう良いであろう」と述べた。