浙江省寧波市での石油化学工場建設反対抗議活動で逮捕される抗議者(ネット写真)
【大紀元日本10月30日】浙江省寧波市で毒性の強いパラキシレン工場の建設をめぐる抗議活動は、28日夜、同事業を「決して始動しない」という市当局の約束で収束を迎えた。来月に控える共産党大会を前にして、安定を一先ず優先させた形となったが、一部の市民は党大会後に約束が覆されるのではないかと懸念している。
問題になっているのは中国石油化工(シノペック)が同市鎮海区で進めている「鎮海煉化一体化プロジェクト」。中でも、ポリエステル繊維などの原料となるパラキシレン工場の建設が焦点。パラキシレンは発がん性があり、胎児に悪影響を及ぼす可能性があるとされている。工場の建設地が寧波市中心部までわずか20キロの距離も市民の不安を深めた。
抗議活動は今月初旬から続き、26日から規模が拡大。英BBC放送によると、27日には市中心部に1万人以上の市民が集まり「暮らしを守ろう」「党幹部は我々の命で自らの業績を築いている」などといったスローガンを掲げて工場建設に抗議した。翌28日も市民数千人が市庁舎前に集まり大規模な抗議デモを行った。一連のデモで50人以上が拘束されたという。
そういった中、28日夜、市当局は「投資側との話し合いで寧波市は、決してパラキシレン事業を始動しない、煉化一体化プロジェクトの前期工程を停止し再度科学検証を行うことを決定」と発表した。この措置は、安定を確保して来月の共産党大会を乗り切りたいという党の意向と見られるが、一部の市民からは「あくまでも市民をおとなしくさせるための臨時策だ」「党大会後は(建設が)依然として始まるのでは」と疑う声もあがっている。
中国では近年、環境問題が発端となる抗議活動が多発。中国環境科学学会の楊朝飛・副理事長は26日、1996年以降、環境問題による集団抗議活動は毎年平均29%増えており、2005年以降では、環境保護部(省)が直接対処した抗議活動は927件で、うち重大事件は72件と認めている(27日付新京報)。昨年は大規模デモが多発し、その数は前年度の1.2倍に跳ね上がっている。