KBSのミサイル発射のニュースを見つめる韓国市民(Getty Images)
【大紀元日本12月12日】北朝鮮は12日午前、「人工衛星」と主張する長距離弾道ミサイルを発射した。今回の発射は、北朝鮮の友好国である中国やロシアからの自制要求を振り切っての強行だった。
発射をめぐって技術的欠陥が見つかってもなお、北朝鮮が急いだことについて、中国のポータルサイト「網易」の軍事コラムは、金正恩政権にとって「絶好なタイミング」だったからだと分析している。
長距離弾道ミサイル発射実験は、昨年12月17日に死去した金正日総書記が生前から準備を進めていたもので、総書記の「遺訓」と位置づけられていた。さらに、今年を強盛国家建設の年と金総書記は目標を掲げ、今年中にミサイルを発射することも生前に決めていたという(韓国聯合ニュース)。金総書記の遺訓を実行することは金正恩第1書記が自らの権威や執政の正当性を築くためでもあると網易の同記事は指摘する。
金正恩氏は就任後、金総書記の神格化をはじめ、軍事優先とする先軍政治をいっそう強化するなど、自らの指導者としてのイメージ作りに苦心してきた。今回の発射が経済制裁を招くことは必至だが、すでに米国の制裁下にある北朝鮮は「それほど懸念していない」。それよりも発射を強行することによって国民に、「勇猛な闘士であることを印象づける」ことを金正恩氏は狙っているという。
金正恩氏は父親の影響力を利用して自らの権威を築いている一方、父親色を薄める動きにも出ている。金正日葬儀の時に霊柩車を護衛していた4人の顧命大臣(王の臨終を見守って遺言を受ける大臣)は全員、金正恩体制で粛清されたり、解任、更迭されたりしている。霊柩車の一番前に立っていた李英浩(イ・ヨンホ)総参謀長は7月に「反党・反革命」との罪名で粛清され、彼の後ろに立つ金永春(キム・ヨンチュン)氏は4月に人民武力部長を解任されている。金氏の後任で4人のうちの金正閣(キム・ジョンガク)氏も最近、更迭された。国家安全保衛部トップの禹東測(ウ・ドンチュク)氏は4月に解任され、姿を消している。
一連の粛清は、北朝鮮で「小幅な政局不安」が起きていることを示していると網易の記事は指摘。1周年を迎えようとする金正恩政権はこのタイミングで人心を束ね、政権内と国民の中で絶対的地位を築き上げなければならないという切迫した状況の打開も今回の発射に託したと見られる。
一方、韓国は先月29日、人工衛星搭載ロケット「羅老(ナロ)」を打ち上げる予定だったが、直前に発生したトラブルにより急きょ中止となった。その直後に北朝鮮は「人工衛星」の発射を発表。「韓国に恥をかかせる意図が明らかだ」と同記事は指摘し、北朝鮮が急いだ理由の1つに、韓国より先に打ち上げることで国威発揚をすることだという。