【大紀元日本2月18日】レーダー照射事件は、日本や米国など国際社会に対する威力偵察だったと見られるが、実は中国国内とりわけ権力中枢における一種のストレステストでもあった。
尖閣諸島の問題発生後、中国は異例な行動を次々と打ち出し、強硬姿勢を示している。レーダー照射も、習近平総書記が布陣し自ら指揮したとの見方があるが、実情は必ずしもそうではないかもしれない。なぜなら、権力交代を無事に終えたばかりの習氏にとって、このような冒険は権威確立のための好材料であっても、それに伴う多々のリスクを察知しえないことは考えられない。すなわち、トップの座に座ったばかりの習氏にとって、国内問題が山積し、火山が瞬時に噴出しそうな状況下において、不測な事態をもたらしかねないいかなる冒険も回避すべきだからだ。
一方、長年の愛国教育により反日感情が高まる中で、とりわけ戦争をも主張する軍の重圧の下で、習氏は如何にしても後退することが許されず、当面ひたすらに強硬姿勢を示さざるを得ない。こういった複雑な背景の元、レーダー照射事件が発生した。
習氏はこの行動を事前に把握していなかったはずだ。つまり習氏にとって、危険なカードを切るのは禁物のほか、軍が主導する対日の戦略方針を把握していても、レーダー照射などのような具体的行動を事前に計画、または承知するはずはないと思われる。
事件後、日本でも現場の軽挙妄動との見方もあるが、いくら反日感情が強く、身勝手な中国軍であっても、軍人としてその行動の厳重性や危険性を知らないはずがなく、あえて軍紀違反をするとは考えられない。むろん、それは中国海軍のフリゲート艦長による命令であったに違いないが、艦長もただお上の命令に従うに過ぎず、本当はその結果に胸が高まる思いだったに違いなかっただろう。
実行者たちはこの冒険に勝算があったのか。回答は肯定的だ。第一、愛国主義の下でたとえ冒険的な行動を取ったにしても大義的な挙動として、評価されなくても諒解されうる。第二、やむを得ない場合、現場兵士による「誤作動」として収拾できる。第三、それを対日戦略方針の一環として実施されたとなれば、習近平らは文句を出せない。第四、もし習近平氏がこの行動を批判するならば、対日の弱腰と責められ、不利な立場になる。第五、権力交代が終わったばかりで、累卵の危機に陥っている習近平氏にとって、軍隊からの支持が何よりも重要なだけに、いささかのことで軍隊の気に障ってはならないはずだ。
では、何者が今回の行動を企画、指揮したのか。言うまでもなく、軍部の中のタカ派でかつ習氏と同床異夢の者たちにちがいない。
さて、その狙いとは何か。もし、無事に成功すれば、軍隊、タカ派、とりわけ本人たちの勢力増強になると共に、習氏の意思や能力を把握することができ、よって足場がなお弱い習氏をより牽制することになる。もし、有事で失敗すれば、最高責任者の習氏に責任を負わせ、倒すと共に、指導部における各派閥を整合し、爆発しそうな国内危機を領土護衛という大義名分へと転化させ、よって独裁政権の延命につなげようとするわけだ。
習氏は今、直前の強硬姿勢を変え、対話などによる柔軟な解決をと言及しているが、問題は、彼の弱点を掴んだ者たちが今後、サプライズの第二弾、第三弾を打ち出さないとは言いきれない。不測の事態に備え、何をどうすればよいか。日本は今、国力というより智慧力と道義性が試練されているのだ。