【大紀元日本2月20日】「いま、中国社会全体の信用度が落第点」「7割強の人は見知らぬ人をまったく信用しない」。これは、先月発表された「中国社会心理状態研究報告」の記述で、中国人が互いに信用しないという、社会の現実を露呈させた。報告書の発表は波紋を広げ、政府系紙・中国青年報は18日、信用度失墜の状況をさらに掘り下げた。
「中国社会心理状態研究報告」は社会科学研究の権威機構・中国社会科学院が発表したもの。同調査研究は、北京や上海、鄭州、武漢、広州など7つの大都市の約1900人の住民に聞き取り調査を行ったうえ、冒頭の結論のほか、「商人や企業への信用度も最悪な水準にあり、官と民、警察と市民、医者と患者、消費者と企業などの社会関係の不信用度はさらに増した」との見解をだした。
中国青年報の報道はこの調査結果に同調。「我々の周りの生活環境をみればわかるはず。この結論は実に多くの人の実感を表している」「宅配便の配達員が来ても、ドアを開けるのをためらう。水道の検針員が来てもできれば家に入らせない。市場で食材を買うとき、重量の水増しはないかと常に目を細めて秤をしっかりとチェックする。肉を買うとき、肉に注水(肉の重量を増すため、肉に水を注水する)されていないかと習慣的に肉を押さえて試す……」
また、下水道の廃油から加工される「地溝油」のほか、有毒物質メラミン混入の粉ミルクなど、後を絶たない食品への有毒化学物質添加の問題は、すでに一種の社会不安を引き起こしている。同報道はこの現状に触れ、「もはや、消費者と企業の間には信頼というものはない」と厳しい現実を指摘した。
社会の信用が崩壊した典型的な実例として、トラックにひき逃げされ、重体の幼児・悦悦ちゃんを通行人らが助けなかった「小悦悦事件」や、街頭で倒れた老人を助けた彭宇さんが、後に加害者とされ高額な賠償金をねだられた「南京彭宇案」などが取り上げられた。
信用度を低下させた原因について、同報告書の責任者である王俊秀氏は「市場経済秩序と法律法規の不備」を指摘した。これらの不備により、各種の詐欺が日常的に発生し、多くの国民がその被害者となっている。人間同士の信頼はそのたびに壊されていく。さらに、政府機関や司法機関への不信感や、国民生活と直に関連する広告、不動産、食品、薬品、旅行、飲食業などの企業への不信感は主に「幹部の職務怠慢や汚職腐敗」が原因であるとの見方を示した。
また、「人々が自己を律する核心的価値観がなければ、社会の道徳体系が崩れ、人々の行為は最低限の基準を失う。社会信用どころか、社会の前進もあり得ない」と王氏は指摘した。