【大紀元日本5月23日】共産党機関紙・人民日報系の環球時報は21日の社説で、中国と北朝鮮の間にいさかいはあるものの、それは日本やフィリピン間のものと「本質が違う」と主張した。日本とフィリピンとは「領土問題」であり、北朝鮮とは、同国の海上警察が海上境界線の曖昧性を利用して中国漁民の金を巻き上げようとしているだけだとの論調を唱えた。
社説は、北朝鮮が中国の漁船を拿捕し、身代金を要求したことを背景としている。「中国と北朝鮮の関係は一は一、二は二」と題するこの社説は、大前提となる「両国の戦略的友好関係」を維持しなければならないとしたうえで、「末端の摩擦」については譲歩しないと強調した。
社説は、日中間や比中間で最近起きている海上係争は、いずれも双方政府の戦略的主張を反映したものであるのに対し、北と中国間のいさかいは政府間関係とは一致しないと指摘。フィリピン船が台湾漁船を襲撃したことは「直ちに両岸(大陸と台湾)とフィリピンの関係に全面的な危機を引き起こし、交渉する余地も少ない」と断じた一方で、北朝鮮については、「国際ルールを守る意思と能力が不足」で、中国が「譲らない態度で」、北朝鮮に「ルールを覚えさせる必要がある」、と大前提である対立関係・友好関係に沿った対応の違いを説明した。
今年2月に北朝鮮が3回目の核実験を実施した後、中国は国連制裁に加え、独自の金融制裁に踏み切るなど、厳しい姿勢を見せてきた。こうした中での中国漁船拿捕は制裁への反発ともみられている。政府の見解を非公式に示す場とされる環球時報の社説は、友好関係を強調しつつ、仲間同士のケンカであっても引き下がらないとの立場を示すなど、「飴と鞭」で北朝鮮に揺さぶりをかけている。
孤立感が深まる北朝鮮も、中国との「戦略的友好関係」を重視せざるを得ない。22日、金正恩第1書記が最側近となる崔竜海(チェ・リョンへ)朝鮮人民軍総政治局長を特使として中国に派遣。崔氏は、金正恩体制が発足してから、中国を訪問した北朝鮮の幹部の中で「最高階級」であると中国紙は報じている。