韓国軍により封鎖された北朝鮮開城工業団地への道(Getty Images)
【大紀元日本5月30日】瀬戸際外交を展開している北朝鮮が突然、柔軟な姿勢を見せはじめた。4月に一方的に強制閉鎖した韓国と共同運営する経済特別区「開城(ケソン)工業団地」について、韓国系の入居企業と対話する意向を示した。一方、韓国政府側は応じない姿勢をみせている。
韓国聯合ニュースの報道によると、北朝鮮の祖国和平統一委員会の報道官は28日、開城工業団地に入居する韓国企業の訪問を受け入れると明言し、団地の操業再開に向けての交渉を提案してきた。
一方、韓国統一部の柳吉在(リュ・ギルジェ)長官は、29日の記者会見で、北朝鮮側のこうした動きに不快感を顕にし、「結局は企業を利用して、南北関係を揺さぶろうとしているだけだ」と一蹴した。
これに対して、韓国政府も公式声明文を発表。北朝鮮側に対して、これまで求め続けてきた、当局間の実務会談を優先すべきだと強調した上で、「開城工業団地は国際社会で通用する、正常な水準と基準で運用されるべきだ」とけん制。
韓国統一部の金炯錫(キム・ヒョンソク)報道官も、29日の定例会見で「当局者間の実務協議を避けて、ほかの道を進もうとすることは疑念を招く」と批判した。
北朝鮮の開城市郊外に位置する同工業団地は、南北経済協力の象徴であり、現在までに123社の韓国企業が進出している。これによって北朝鮮側は、年間で9千万ドルの外貨収入を得ており、外貨収入が乏しい北朝鮮にとっては、まさにドル箱事業となっている。
だが、その一方で、南北関係が冷え込む度に、北朝鮮政府は、韓国側の企業関係者の身柄の拘束、物質輸送の停止、土地使用料と賃金の値上げの要求などを行ってきており、幾度となく、韓国側を悩ませてきた経緯もある。
今年はじめの北朝鮮の3度目の核実験に対して、国連は制裁を決議した。それに反発する北朝鮮は、戦争を示唆するなどの強硬姿勢をみせ、開城工業団地も切り札に利用。3月末には同工業地区の閉鎖を警告し、4月3日には韓国人従業員の立ち入りを禁止。現在、操業は事実上停止している。韓国側の損失は9千億ウォン(約810億円)に達したという。