米中首脳会談を前に開放された中国系米国人実業家・胡志成(看中国よりスクリーンショット)
【大紀元日本6月8日】オバマ米大統領と中国の習近平国家主席の会談を前に、中国当局から出国禁止にされていた中国系米国人実業家・胡志成(音読)氏が3日に解放され、5年ぶりにロサンゼルスの自宅に戻った。ニューヨーク・タイムズ紙は5日付の報道でその経緯を伝えた。
胡氏の妻は「事前の通知はなかった。中国の親戚が電話で、夫はロサンゼルス行きの航空機に乗ったと知らせてくれた。そこではじめて解放されたことを知った」と語る。「とても嬉しい。5年前にパパと最後に会った息子はもう18歳、身長は30センチも伸びた」と喜びを隠せない。
中国生まれの胡氏はマサチューセッツ工科大学で研究を行ったことがあり、48項目の特許を持っている発明家である。20年以上、海外で生活をしていた彼は2004年に中国に戻り、会社を設立した。事業内容は、車の排気ガス中の有害成分を還元・酸化によって浄化する装置「三元触媒(さんげんしょくばい)」を、中国の自動車メーカーに提供することである。
ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、胡氏の中国での事業は大成功を収め、現在中国の国産自動車の約半数はその装置を導入している。
しかし、ある日彼は、取引先である某中国企業の機嫌を損なったため、人生の悪夢が訪れた。政治の世界で幅を利かせるこの企業から、品質不良と思われる部品の仕入れを断ったためだ。
2008年、彼は商業情報窃盗の罪で17カ月間の懲役を言い渡された。「中国の検察当局ですら、『この判決はまったく根拠なし』としている」という。釈放された後も、中国の出入国管理機構は「指名手配の犯人である」との理由で、彼の出国を禁止した。彼はニューヨーク・タイムズ紙の取材に対して、「だれが私を指名手配にしたのか、いまだに分からない」と語った。
米人権団体「対話基金会」の幹部ジョーン・カム氏は胡氏の事案について、「人権活動家と米外交官たちは非常に手こずっていた」と明かした。
胡氏の娘、カリフォルニア大学バークレー校在学中のヴィクトリアさんは父親を救出するため、2011年にインターネットで6万人の署名を集めた。父親が自宅に戻った今、彼女はフェースブックに喜びの気持ちを綴った。「5年の歳月を経て、パパはやっと帰ってきた……。箸を探すのに、家の中をあちこちと歩くその姿を見て、いままでにない最高の幸せを感じている」