包頭市新投資計画 融資金利20%以上、中国版サブプライムローン危機の縮図

2013/06/24 更新: 2013/06/24

【大紀元日本6月24日】中国内モンゴル自治区の包頭市政府は14日、同市東河区の北梁エリアを対象に、建設期間3年、総投資額200億元(約3200億円)の住宅整備建設計画を発表した。当日開催された記者会見において、同市の高志勇・副市長は総投資額200億元のうち、土地徴収補償に充てるのは33億元(約528億円)、建設資金は約77億元(約1232億円)、市政インフラ整備建設が48.5億元(約776億円)、融資利息の支払いに41.5億元(約664億円)を充てると発言した。言い換えれば、今回包頭市の投資計画の融資金利は20%以上だ。

高副市長は資金調達のルートについて、「(市の)財政から一部出し、残りは銀行から借り入れ、企業からの立替、社会からの寄付、住民からも出してもらい、さらに上級(中央政府)からも一部を出してもらう」と説明した。しかし、融資の返済方法や時期などの詳細については全く触れなかった。

これは包頭市が将来債務危機に陥る非常に危険なシグナルだ。ギリシャの財政危機が発端となった欧州債務危機が2009年に発生してから、国際社会では一つ国の国債利回りが7%が超えるとその国が財政破たん債務不履行に陥る確率が高いと見なしている。いわば危険水域の7%。これを基準にすれば、金利20%以上もする住宅整備建設計画によって包頭市の財政は確実に破たんし、融資した金融機関や企業、特に個人投資家が泣き寝入りしなければならない事態になる。

6月13日付国内紙「第一財経日報」の報道によると、国内中西部のある市の市長が、地方政府が高金利で資金集めをする理由について、「ある都市の新しい地区を建設することを例にしよう。今現在、あの地区の地価は1ムー(1ムー=6.667アール)あたり50万元(約800万円)だが、インフラ整備建設を行えば、その後その地価が1ムーあたり1000万元(約1億6000万円)になる。今たくさん借金をしていると言われているけど、しかし5年間をください。5年後その地区のインフラ環境が都市中心部と同様に完備される。そのために何百億元の資金を投じるが、5年後に1000億元(の収益)(約1兆6000億円)が帰ってくる」と話した。つまり、地方政府は大規模な投資計画が結果的に土地価格の上昇につながり、地方政府の土地関連収入が急増することを見込んでいるからだ。そのために、地方債を高い利回りが付く様々な金融商品に姿を変え、銀行や投資信託会社を通じて市民に販売することでより多くの資金を集める。

包頭市東河区井坪地区も総投資規模200億元のバラック住宅設備建設計画の対象となっている。国内投資信託会社の華宸信託が井坪地区の建設資金4500万元(約7億2000万円)を集めるための計画書によると、元本の保証はできないが100万元(約1600万円)以上を投資すれば、年8%~10.5%の利回りを受け取ることができるという。

この状況は2007年に米国で発生したサブプライムローン危機とよく似ている。当時米国では土地および住宅価格の上昇を見込んで、金融機関は信用度の低い低所得者に貸付をする、また住宅ローンの返済能力の有無にかかわらず多くの一般個人が無理に融資を受け住宅を購入したが、その後の住宅価格の急落に伴い、個人およびリーマン・ブラザーズなどの大手金融機関が次々と破たんした。これが引き金となって世界金融危機が発生した。

しかし、中国の地方政府官僚たちは教訓を学んでいないようだ。今年2月以降、包頭市のように経済成長を保ち、自らの昇進のために業績を残す目的で中国各地の地方政府は相次いで新たな大規模投資計画を発表しており、その総規模は20兆元(約320兆円)にも上り、2008年中央政府が主導した4兆元経済刺激計画よりもはるかに大きい。

地方政府が経済刺激策として新たに債務を負う一方で、未だ返済できていない莫大な債務が残っている。6月13日国家審計署がまとめた報告書によると、2012年末まで国内36の地方政府が返済義務を持つ債務残高は約4兆元(約64兆円)に達しており、そのうち10の地方政府の負債率は国際警戒ラインである100%を超えていると警告した。同報告書では、各地の土地譲渡収入の伸び率は縮小しており、一部の地方政府の債務返済圧力が強まっていること、また一部地区での高速道路建設関連の債務の増加ペースが速く、返済圧力が強いこと、地方政府系の融資プラットフォーム会社のコーポレート・ガバナンス機能が不完全で、一部の融資プラットフォーム会社の資産の質量が比較的劣っており、返済能力が低いとの認識を示した。

また、元財政省省長の項懐誠氏は4月6日に開催されたボアオ・アジア・フォーラムにおいて、地方政府の負債の透明度が低く、正確な地方政府負債の総額は不明だが、20兆元(約320兆円)を超えたとの推測を述べた。政府当局が公表した4兆元の5倍だ。

土地収入に過剰に依存する地方政府の経済発展モデルは持続不可能だ。そのモデルを転換することが急務で、中国の住宅および土地価格が一旦急落すれば、莫大な負債を持つ地方政府が相次いで財政破たんに陥り、債務不履行になることで、中国経済が崩壊し社会が不安定となり、その連鎖反応で世界経済にリーマン・ショック以上の恐ろしいダメージを与えるに違いない。

(翻訳編集・張哲)
関連特集: