【大紀元日本7月3日】中国銀行業監督管理委員会(銀監会)の尚福林主席は6月29日、上海市で開催された「陸家嘴フォーラム」において、国有大手に寡占されている銀行業への民間資本の参入を奨励すると発言した。
尚主席は民間資本が銀行の株式取得による資本参加、および金融機関の再編成・改造への参与を奨励し、または民間資本がリスクを自己負担する民営銀行やファイナンスリース会社や消費金融会社の設立を許可し、さらに成熟し運営が安定している村や町クラスの銀行が最低出資比率の範囲内で、主要発起銀行と他の株主との間で持ち株比率を調整することを認可するなどを述べた。
国内金融市場で起きた流動性ひっ迫、いわゆる「銭荒」で6月20日の銀行間市場短期金利指標である上海銀行取引金利(SHIBOR)が急騰した直後の尚主席のこの発言が非常に興味深い。一部の専門家や市民は共産党政権は国民の資金を吸い上げて流動性のひっ迫を解決しようとしているとの認識を示した。
国内大手検索サイト「捜狐」(SOHU)の掲示板において、銀行業への民間資本参入の報道に対して、「国有銀行すら管理がうまくできていないのに民営銀行を設立するなんて」や「民間資本が銀行業へ進出、(私たちの)預金は保障されるのか」「管理ができなければ、金融リスクを一層高めるだけ」などと多くの疑問の声が集まっている。
在米中国問題専門家の伍凡氏は「希望の声ラジオ放送」の取材に対して、中国当局は現在銭荒を解決するために、紙幣を増刷するよりも民間資本を投入する方が政権にとって有利だとした。「紙幣の増刷ではインフレ圧力を強めるだけだと当局がよく心得ている。そのため国民のお金を集めて(政権自らが原因で起きた)この金融危機を解決しようとしている。こうすれば当局が負うべき債務の量が増えなくて済むし、債務は国民に転嫁することができるから好都合だ」と解説した。
米サウスカロライナ大学の謝田教授は同様の考えを示した。「当局は銀行への民間資本の株式取得を許可しただけで、民間資本が筆頭株主になって経営支配権を持つことを許可していないことから、真に銀行セクターを開放したと言えない」。もし真に民間資本が銀行を設立することを許可し、あるいは外資の参入も許すことができるならば、(銀行)サービスの向上、融資や貸出のコストの低下をもたらすことができるため、中国の国民にとってはいいことになる。しかし「これが実現すれば共産党政権が金融市場へのコントロールが弱まり、あるいは完全になくなる。共産党政権はこれを望まないだろう」と謝教授は指摘した。
今回、当局が民間資本を取り入れようとしているのは「1つの罠」であり、政権への輸血を求めているだけだと教授はみており「国民のお金を手に入れたいだけで、本当の権益を与えることはしないだろう」との見解を示した。