【大紀元日本7月5日】中国で「歌王」と呼ばれ、誰もが知っている国民的歌手の李双江の息子、李天一(17)が2月19日、仲間4人と北京市内のホテルで婦女暴行事件を起こし、逮捕された。有名人の息子が起こした事件だけに、市民からの注目度も高い。江沢民前国家主席の孫が共犯者の一人と取りざたされるなど、この話題は連日、世間を賑わせている。
人民解放軍の少将でもある李双江は数々の革命歌をヒットさせ中国では知らない人がいない存在だ。妻は27歳も年下の人気歌手。李双江は56歳のときに授かった息子を「心に咲く花」に喩え、その溺愛ぶりも有名だった。逮捕された李天一は誰もが羨む家庭に恵まれ、5歳の時に、北京オリンピック招致親善大使に選ばれている。書道やアイスホッケーにも長け、アメリカの高校を卒業後、ピアニストとして活動するなどまさにバラ色の人生を送っていた。
そんな「目に入れても痛くない」愛息子だが、すでに前科があった。2011年、無免許で高級車BMWを運転し、北京市内で中年夫婦に対する暴力事件を起こした。その際、李双江が土下座して、被害者との和解に漕ぎ着けたとも言われた。李天一は未成年のため、1年間少年院に収容され、2012年9月に出所したばかり。
「親の心子知らず」。李天一は出所後、李冠豊と改名し、これまでの非行を改める様子もなく、半年も経たないうちに今回の婦女暴行事件を起こした。李双江は心労で入院しているとの話も出ている。
しかし、今回の事件は「親の教育責任」で終らなかった。発生から5ヶ月が経っても事件の捜査は進んでいない。北京市海澱検察院は3日、「事件は極めて複雑だ」とし、警察当局に再捜査を求めた。「被害者、証人、容疑者がそろっているのにどこが極めて複雑だ」と再捜査の決定に市民から不信の声が浮上し、まだ裏があるのではないと勘ぐる人も少なくない。
実は共犯者4人の素性が未だに明かされていない。「大物政治家の孫や息子が関与している」との噂が出回り、曾慶紅の孫、李源朝の息子、陳雲の孫、江沢民の孫など実力者の名前が出ている。これらの政界重鎮と比べれば、少将とはいえども李双江ははるかに格下。親の実力勝負で負けたため、李天一の名前だけ公開されたとの推測もある。
警察当局は直ちに「実力者の家族ではない」と噂を否定。各メディアも「内情を良く知る人」の話として、「5人のうち、成人は1人のみ。未成年の4人は実名報道しない」と報じ、1人の成人について23歳の会社員との記述にとどまっている。李天一の年齢は19歳との説もある。
この報道に市民は「なぜ警察当局が正式に発表せず、内情者の話を報じるのか」と不信感ばかりを募らせた。国営通信の中新社も「順番に被害者と性的関係を持った」など回りくどい言い方を使い、婦女暴行という犯罪を意味する言葉の使用を避けた。なかなか進まぬ捜査や犯罪行為をもみ消すような報道、いったい何を隠したいのか、疑惑は深まるばかりの事件だ。