【大紀元日本9月26日】遼寧省瀋陽市で25日、「城管」と呼ばれる都市管理員2人を殺害したとして、死刑判決を受けた元露天商、夏俊峰死刑囚(36)の死刑が執行された。夏死刑囚の犯行は複数の城管から激しい暴行を受けた後に及んだもので、世間や弁護士業界で判決直後から異論が沸き起こっていた。その最中での執行は大きな波紋を広げ、同情や当局を批判する声が高まっている。
事件の経緯
2009年5月16日、妻と瀋陽市の路上に屋台を出していた夏は、数人の城管から無許可営業と注意され、暴行を受けた。管理事務局に連行された後、さらに10数人の城管から暴行を受け、夏は所持していたナイフで2人の城管を刺殺し、1人に重傷を負わせた。同年11月、瀋陽市中級人民法院(地裁)が一審において殺人罪で死刑判決を下した。
11年5月、遼寧省高級人民法院(高裁)は一審を維持し、夏の死刑判決が確定。だが、弁護士ら知識人が、同事件は正当防衛の要件を満たしていると主張し、最高裁に嘆願し再審を求めていた。
こうしたなか、24日、インターネット上で複数のメディア関係者が、最高裁は高裁の死刑判決を維持し、25日に死刑が執行されるとの情報を流した。25日午前5時過ぎ、夏死刑囚の妻の張晶さんのもとに関係者が訪れ、「最終面会」を知らせた。
30分間の面会で、夏死刑囚は依然、自らの行為は正当防衛であると主張し、判決を不服として、最高裁の判決書に署名していないと話した。一審の法廷で提示された調書の1つは、脅迫されてサインしたもので、拒否すれば暴行を振るわれることも明らかにした。死刑は薬物注射によって執行されると妻に伝え、「家族が一人でも生きていれば、控訴しつづける」ことを望んだという。
同日午後4時ごろ、張さんは裁判所からの電話で、夏死刑囚は処刑されすでに火葬されたことを知らされた。
弁護士らが声明発表
夏死刑囚の弁護士・陳有西氏は「我々弁護士は裁判所から如何なる知らせも受けていない。張さんも如何なる知らせも受けていない。これは最高裁の判断で、これ以上言うのは無益である。二年半の努力、挽回することはできなかった」とコメントした。
二審で弁護士を務めた謄彪氏は今回の死刑執行は「司法殺人」と批判し、判決を下した者や指示した者が「凶徒」であると非難した。
同日、中国の弁護士25人が連名の声明を発表した。事件の審理で「弁護士は証拠に対し複数の疑問点を指摘した。(検察側が)夏俊峰が城管に連行された時も、事務局にいた時も暴行を受けたことを覆すことができていない」とした。さらに、証人の出廷が制限されるなど、審理の過程で不透明で「違法」な部分もあると強調。「証拠に疑問点が残り、(審理)過程に違法性がある」死刑判決の即時執行に弁護士らは抗議した。
同情が殺到
中国では城管や警察の横暴に庶民の不満が集中し、社会問題化していた。そんな城管からの暴行を受けた中で犯行に及んだ夏死刑囚に、世論から広く同情を寄せられていた。
今回の処刑について、中国人民大学政治学部の張鳴教授は、ミニブログ(微博)で「助命嘆願し続けた。夏俊峰のためだけではない。政府のためでもある。民意に少しでも空間を残さないと」と悲痛の気持ちを表した。
北京科学技術大学の趙暁教授は「世の人々にこのいわゆる文明国家の真の姿を見せつけた。特権階級はどんなに罪が重くても死ぬことはない。庶民は正当防衛であっても死なされる」と政府を痛烈に批判した。
北京の劉暁原弁護士は「高官の妻は人を殺しても生きているのに、庶民の露天商が防衛で城管を殺したら死刑」と薄煕来受刑者の妻の英国人殺害事件を引き合いに非難した。
また、過去の城管が起こした殺人事件と対比し、死刑執行が不当であると主張する声も殺到。2010年1月、貴州省で農民とのトラブルで警察官が発砲し農民2人を殺害した事件で、警察官は懲役8年の刑を受けたにとどまった。また今年7月、湖南省で6人の城管がスイカ売りの男性を殴り殺した事件が起きたが、当局は89万元(約1400万円)の賠償金を支払っただけだった。
一方で、メディア関係者の暴露によると、共産党中央宣伝部は各新聞社に対し、「夏死刑囚の件に関し論評してはいけない。国営新華社通信の原稿を使え」と通達した。インターネット上の当局批判の書き込みへの削除作業も進められている。