【大紀元日本11月14日】中国当局が、ロイター通信の中国駐在記者として赴任する予定だった米国人のポール・ムーニー記者のビザ発給を拒否したことが波紋を呼んでいる。ムーニー氏は13日、米メディアに対し、中国共産党の統制強化に「驚きと失望」を感じているとし、「米国や各国の政府が毅然たる態度を取ることが重要」だと主張した。
ムーニー氏は中国駐在18年の経験を持つベテラン記者。昨年9月、ビザの在留期限が切れたため米国に帰国。今年3月から、ロイター記者として再び中国に赴任する準備を進めてきたが、8ヶ月経った今月8日、中国外務省がロイターに対し、ビザを発給しないと通告した。理由は示されなかったという。
ムーニー氏は米国の海外向け放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)の取材に対し、中国に駐在したこれまでの18年間、チベットや新疆問題、エイズ問題、人権問題などに取り組んできたが、ビザの発給を拒否されることはなかったと明かした。「中国の状況は以前よりも悪化した」ことが拒否の原因だと分析した。
「人々が抱える多くの不満に対し、政府は解決に励むのではなく、統制と弾圧を強めるだけ。それによって人々の反抗が一層強まる」。この「18年前よりもひどい」状況がいかに報道されるかに「中国政府はピリピリしている」とムーニー氏はみた。
「中国当局による海外の記者への威嚇や脅迫は絶えることはなかった」。それでも敏感な話題について取材活動を続けることについて、ムーニー氏は「多くの場合、中国のメディアは政府の制圧で報じることはできない。我々に責任があるのだ。悲惨な境遇に遭っている人たちの声を伝える責務がある」と話した。
経済の発展は中国に、外部からの批判に歯向かう「自信」を付けたとムーニー氏は指摘。さらに中国の国際的地位や経済力が多くの国を黙らせた。米国やその他の国々の政府が毅然たる態度を取る必要があると主張し、「中央テレビ(CCTV)のビザ発給を遅らせるなどで、中国は妥協するだろう」
海外メディアへの取り締まり強化
ムーニー氏は米国に帰国する前、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの中国駐在記者を8ヶ月間務めた。その間、多数の報道記事を書いたものの、「立場がますます中国寄りになった」同紙は、パンダの報道を含めた2つしか採用しなかったとムーニー氏は明かした。
米NGOフリーダム・ハウスが10月22日に発表した報告書は、中国当局による海外メディアへの弾圧は過去5年間で強化されたと指摘した。その手段は少なくとも4つあるという。
①直接行動。中国の外交官や現地幹部などが直接、中国国内や海外での取材を妨害し、報道規制を無視した海外メディアを制裁する。
②経済利益などをエサに、メディアに自己検閲させ、敏感話題の報道を「自粛」させる。
③広告主や、放送を担う衛星会社を通して間接的に圧力を掛け、中国政府が目の敵とするメディアの運営を困難にする。
④言うことを聞かない海外メディアに対し、ハッキングや人身攻撃を行う。
これらの手段を用いて、中国政府が国内メディアに対しだけでなく、海外メディアにも触手を伸ばし、その「成果」も出している。最近では、米通信社ブルームバーグが中国指導部の親族の資産に関して調べた自社の記事について、中国当局から国外追放されることを懸念し「自粛した」と報じられたばかりだ。
フリーダム・ハウスの報告書は、メディア各社が中国政府から受けた圧力を公開すべきだとし、さらに、自国の記者を保護するよう各国政府に訴えた。外交手段を通じ、ビザ発給の延期や拒否は容認出来ないと声を上げるべきだと主張した。