【大紀元日本11月29日】日中関係は薄氷のごとくでも、文化のつながりは実に深遠。日本で長く生活すると、そういう発見にたびたび出会う。最近もまた、ある言葉の共通性に感心した。
その言葉は「紙老虎」。漢字からも読み取れるように「紙の虎」、つまり、「張子の虎」だ。表現こそ違うが、同じものを指す。その奥の意味まで同じであることが興味深い。どちらも「虚勢を張る人」としての意味を持っている。
ここのところ、この言葉の英文直訳は欧米メディアでも露出度が高い。中国が威嚇めいて設定した防空識別圏にアメリカの戦闘機が土足で入った後の記者会見で、ある記者は、北京政府が「paper tiger」と見られていることに懸念を抱かないかとの質問をしたからだ。
それに対し、外交部の報道官は冷静沈着に「『紙の虎』という言葉には特別な意味がある。往年の毛沢東主席がおっしゃった『紙の虎』は何を指すのかを調べるといい」と記者の不勉強を退けた。
確かにpaper tigerは欧米圏では新出単語だが、「紙の虎」は毛沢東のお気に入りの慣用語だ。「自分が強大だと称するすべての敵勢力はみな、紙の虎に過ぎない。その理由は彼らが人民から脱離しているからだ」。毛沢東はまた、たびたび、アメリカを「紙の虎」と吐き捨て、「米帝国主義(米帝)」を罵倒した。
しかし、そんな毛沢東は1970年代には紙の虎・米帝と仲良くし、さらに、米帝と仲良くできたことを北京の偉業だとし、得意げだった。
今では、毛沢東から政権を引き継いだ北京の幹部や地方の幹部、大中小の機関の幹部、幹部でなくても財を成した富裕層などはこぞって、子女を紙の虎・米帝の所に送りこんでいる。どれにも当たらず国内にとどまるネットユーザーらは羨望の眼差しで「米帝」を米国の愛称として使い「米帝様」と表現する。
前出の報道官はさすが中国史、いや、中国共産党史に詳しい。とっさの質問に対しても、毛沢東の教えを持ち出し「アメリカこそ紙の虎だ」と暗に米国を批判した。だが、紐解くと毛沢東の敵勢力や紙の虎への定義はどれも今の北京政府にピッタリと感じるのは筆者だけではなさそうだ。
そんな北京政府は防空識別圏の設定のついでに、在日中国人に対して緊急事態に備えた連絡先の登録を呼びかけた。あたかも緊急事態がすぐにでも起きそうに煽るのも張子の虎の「虚勢」を連想させる。ただ残念なことに、多くの在日中国人は緊急事態を恐れるよりも、個人情報がすべて大使館に握られることに不安をもつ。「緊急の時は頼れ」と言われても、それが寄りかかると倒れてしまう頼りのない張子の虎だったら躊躇してもおかしくない。