【大紀元日本12月25日】12月初旬、北京のマンホールで暮らしている人達が発見されたニュースが、中国ネット上で話題となり、社会で大きな反響を引き起こした。これらの「マンホール住人」の多くは年配で困窮した地方の出稼ぎ労働者で、栄光ある輝かしい首都の最も安いアパートの家賃も払えないため、地下のマンホールに住み家を構えていた。清潔でなくても厳しい冬の間は天国のような暖かな「我が家」だと語った。
北京日本人学校や高級ホテルの麗都酒店、有名な麗都広場と麗都公園の所在地でもある北京市朝陽区の麗都地区で、今回20数人の「マンホール住人」が発見された。河北省出身の王秀青さんの境遇が特に人々の関心を引いた。
3人の子供の父親である王さんは、政府の一人っ子政策に違反したため巨額な罰金が課された。罰金を払わなければ、子供達の戸籍登録が出来ず進学もできない。子供たちの将来のために出稼ぎに来た王さんは、月数百元の家賃も惜しんで10年前からマンホールに住み始めた。
52歳の王秀青さんは、毛沢東時代の「赤世代」として生まれ育ち、文化大革命、改革開放と急速発展という現代中国のあらゆる激動を経験した。いわゆるタフな初代出稼ぎ労働者でもある。昼間は洗車の仕事をし、夜になると、棲家となる「マンホール」に帰ってくる。
窮屈で湿度の高いマンホールだが、王さんは「長くいると、気にならなくなる」と新京報の記者に話した。ただ、夏は暑すぎて、マンホールから出て芝生で寝泊まりしているという。照明がないため、ろうそくを付けている。外から明かりが見えると追い出されるため、毎日ほんの少しの間だけ点けている。
明かりのないときはラジオを聴いて時間をつぶしている。タバコと食べ物以外はほとんど買い物をしない。上り下りするのが面倒だから、トイレは持ち込んだビンで済ましている。
ただ、地下から有毒なガスが湧き出たり、上からゴミや物が投げ込まれたりするなど、危険もともなっている。
過酷なマンホール生活の支えは3人の子供だという。「子供たちは学校でよく頑張っていて、成績もいいし、いつも賞状を貰ってくるのです。この子達のためなら辛くても耐えられます」と話す王さん。
また、10年間マンホール生活を続けて、家賃毎月300元で計算すれば、10年で3万6千元を節約できたという。
記者がマンホール暮らしの尊厳について質問すると、王さんは「私のような乞食に近い暮らしをしている人にとって、尊厳は贅沢なものだ」と応えた。
現在、政府が全てのマンホールを、人が出入りできないようにセメントで固めて封じてしまった。「マンホール住人」はこの冬をどこで過ごすのだろう。
幸いなことに、王さんはその境遇が世間に知れて、ある大学で泊り込みの警備の仕事に就いた。