【大紀元日本1月25日】中国人民銀行(中央銀行)は1月15日に開かれた記者会見において、2013年末時点の広義マネーサプライ(M2)残高は110兆6500億元(約1881兆500億円)で、前年同期比で13.6%増加、また2013年通年の社会融資残高が前年比で9%増の17兆2900億元(約293兆9300億円)であると発表した。
人民銀行調査統計司の盛松成・司長は記者会見で、中央銀行によるM2の急増で不動産価格などの資産価格を急上昇させたという世論の批判を否定した。「中国のM2規模が急増した主因は貯蓄率が高いことにあり、中央銀行、商業銀行とすべての企業と個人によってもたらされたものだ」と述べ、人民銀行だけで100兆元(約1700兆円)も上回ったM2規模を拡大させたのではないと反論した。また、盛司長はM2の対GDP比率は良くない比較指標だと述べた。
盛司長の発言は李克強・首相の主張と全く逆である。2013年10月21日、李総理は中国労働組合第16回全国代表大会において、「M2の残高規模は3月末時点で100兆元を超え、国内総生産(GDP)の2倍となった。言い換えれば、『プール』の中の通貨はすでに多くて、再び紙幣を印刷すればインフレを招くのだ」と懸念を示した。これは人民銀行と中央政府の不協和音に聞こえるが、金融政策では中央銀行と習・李現政権の見解が違うのだろうか。
盛司長の発言について、米国サウスカロライナ大学謝田教授は本紙の取材に対して、「過剰に貨幣を供給したか否かについての最終的な結論はインフレだ。しかし中国の現在のインフレ統計指標はすべて偽りで、そのうえ貨幣の過剰供給を否定したことは二重の騙しとなる。政府当局はM2の成長率を14%以内に設定したのに対して、GDP成長率はこの水準に達したことがなかった。この状況はまさにインフレだ」と強く指摘した。また、謝教授は「中国国民の貯蓄率は今までずっと高い水準で推移しており、また前年同期比での貯蓄率が急に高くなったりしたことは一度もない。しかし前年同期比でのM2成長率は絶えず高くなっている」と話した。
同じく在米中国経済学者の何清漣氏は「M2がGDPの2倍になったとは、1元(約17円)のGDPを創出することに対して2元(約34円)の消費または流通が必要だということになる。この10年間、中国のM2成長率は平均18%に達しており、GDPの成長率は平均9.5%だ。2011年度末時点のM2残高は85兆元(約1445兆円)で、2000年度末時点の13兆元と比べて約6倍と急速に増加したが、その間のGDPは4.7倍しか拡大しなかった。過剰な貨幣供給が招いたインフレ圧力は今主に中国国民が耐えている」との考えを示した。
経済学者成思危氏は11日、中国当局が経済を発展させるために、投資に強く依存している現状は全く解決されず、したがって貨幣供給を増加せざるを得ないと指摘し、また「当局は貨幣を過剰に供給しただけではなく、マネーを氾濫させたのも事実だ。これによって物価を上昇させ、インフレ圧力を強めたことも揺るぎない事実だ」と批判した。
一方、人民銀行の盛司長は記者会見において、中国で急速に拡大している影の銀行について、「影の銀行は金融創新の産物で積極的な働きがあるが、そのリスクのあり方も認識しなければならない」と述べた。
謝田教授はこの発言について、「影の銀行に関して主な問題は影の銀行は監督管理を受けないため、金融的な問題や危機が起きれば責任を負うべき責任者がいないところにある。影の銀行が有益で有利だとするなら、それは中国当局の利益であろう。影の銀行は利率の制限を受けないため、思いのままに動くができる。たとえば高収益の理財商品(金融商品)で国民を勧誘することができる。これはまさに大きなリスクだ。」と見解を示した。
また北京の首都経済貿易大学の蘭継平・経済学教授は本紙の取材に対して、「これまで、われわれはすでに影の銀行のリスクを目にした。信託と理財商品、この二領域だけでも、去年危機が続発していた。そのリスクは直接、国民に転嫁されている。それ以外に、数えきれない担保会社と民間融資会社がある。高利貸しが有益で有利だとするなら、政府が最も大きな貸出人だ」と話した。